電王戦での持ち時間設定について

今回の電王戦第三局の前日、私は対局設定の「持ち時間」を時間を減らそうと考えました。

簡単に言うと事前貸出時の持ち時間の設定から変更すれば(棋力は落ちるものの)指し手が変化する可能性が高くなるからです。

しかし、そのことをツイートすると、すぐにドワンゴの担当者から私に電話がかかってきました。

ルール上、どう書かれていようと私は主催者側の意向には従いますし、主催者を困らせる意図は全くないです。

しかし、「ルール上、どう書かれているのか」そして「ルールはどう解釈されるべきか」というのはまた別の問題ですから、ここでハッキリさせておきたいと思います。

例えば、今回のルールの書き方で、将棋所の対局設定の「持ち時間」が変更可能であるという私の主張に、西尾先生のような疑問の声もあります。

これに対して反論しておきます。

例えば「持ち時間を5時間とする」と書いた場合、人間は5時間フルに使うとは限りません。4時間しか使わなくとも良いわけです。毎回4時間以内に対局を終わらせる人はルール違反ですか?違いますね。5時間というのは最大で使っていい時間が指定されているに過ぎません。

このことをもしかすると「それは屁理屈だ」という風に捉えるかたがいらっしゃるかも知れませんね。

では、電王戦ではなく、電王トーナメントのほうのルールはどうなっているか確認してみましょう。

予選リーグの持ち時間は 15 分、持ち時間消費後は 10 秒将棋で対局を行う。
決勝トーナメントは持ち時間 2 時間、切れ負けとする。
denou_tournament_rule2014.pdf

こうなっています。しかし秒読みの10秒が過ぎると切れ負けですから、ネットワーク遅延などを考慮に入れ、私を含め、多くの(?)開発者は対局設定のところで9秒とか8秒を指定しています。

もし、電王戦で対局時間の設定を変更するのがルール違反だと言うなら、電王トーナメントで多くの開発者はルールを犯していたことになります。

わかりますか?

ゆえに、電王戦のルール上は開発者は持ち時間設定を当日に5時間以外に変更して良いのです。あのルールの書き方では、論理的にはそれ以外の解釈は出来ないのです。

関連する問題として、HyperThreadingの設定をどうするかというのもあります。

あとは今回のルールでは遅刻して持ち時間を引かれたほうが得ではないのかという問題もあります。

って、ツイートしたら、平岡さんが先にツイートしてて、開発者として負けた気分。

まあ、私は大人だからわざと遅刻とかはしないわけですよ。私を何だと思ってるんですか?

電王戦当日、五稜郭公園の周辺を観光がてらぼちぼち歩いてたら言われてた時間に30分ぐらい遅刻したけどな!ヽ(`ω´)ノ 放送始まる前だったからセフセフ。

なお、「セフセフじゃねーよ」というツッコミは受け付けておりません。

以上、イベント主催者がイベントを意図通りに実現するためにルールをきちんと明文化して穴がないように書くのは結構難しいという話でした。

電王戦での持ち時間設定について」への22件のフィードバック

  1. もうやねうらおさんがルール作ったほうがいいかもしれませんね。
    ただ、あんまりガチガチにしないで性善説に頼るというのが連盟の方針かもしれません。問題が起きたらそこで対応する感じですかね。
    黙ってやるのではなく、公にツイートしてからやろうとするというのは、本当の悪役になれない悲しい性ですね。

    • 時間の件ですが、結果的に変更しなかった(できなかった)のは良かったかもしれませんね。
      時間設定が違えば、もしかしたらあの奇跡の一手が出てなかった可能性もあるのではないでしょうか。

  2. 後出しでクレーム付けるのは、お互い良くないですもんね。事前対策として、開発者側は指し手変化プログラム(考慮時間のメリハリやマキャベリシステム構築)の工夫をしておく。棋士側は、決め打ちをせず、指し手のランダム性を理解しておく。あとでゴチャゴチャ言わない。そうすると誰もがハッピー。

  3. 黙って実行しないあたり、やねさんの根っこの部分の善良さを感じますねw
    ところで、又聞きで申し訳ないですが、元ライブドア・宮内氏が著書『虚構』のなかで以下のように述べて いるそうです。「ルール内でも叩かれる」ことがあるのと関連性を感じたので、ちょっと転載しますね。お気をつけくださいw

    「 堀江や私は、違法は論外としても、法の網の目をか いくぐる行為は合法なら許されると信じていた。それに、合法の積み重ねが邪な脱法意識のもとで行わ れると、国家権力はその脱法を許さないという『国家の論理』を知らなかった。要は未熟だった。」

  4. 日本の会社法が「やっていいこと」が記述しているのに対してアメリカの会社法は「やったらダメなこと」が書いてある。どちらにも「書いてなくても白」「書いてなくても黒」、ついでに言えばその中間に広大なグレーがある。

    ところが、書いていないことについて日本の場合は「黒っぽいグレー」という所からスタートするのに対して、アメリカの場合は「白っぽいグレー」からスタートするので、より柔軟性が高い。

    M&Aの世界では、その違いが顕著に現れている。

    って聞きました。やねうらおさんは、アメリカンな感覚ですね。

  5. そもそもプロ側はハメ手を探す前提なのに、ソフト側には空気読んでね、というのは空気が読めてないと思うのです。

  6. F1のようにルールのギリギリを攻めたり、穴をつくのが当たり前の競技も面白いと思うんですけどね。

  7. 棋士って意外と汎用性無いんですね。
    そんなガチガチでは色々不便じゃないかと思うんですが、上位の方々にとってはそういうものなんでしょうかねぇ。

  8. 当日バージョンアップ可、で問題解決できると思うんです。
    半年も成長しない棋士もいないですし。

  9. ひまうら王の完成はまだでしょうか?
    地味に楽しみにしているのですが・・・

  10. 事前貸出自体がが不正の温床なんですよね
    一般視聴者は「事前貸出ありで、それで人間側は勝てるのか?」というのがコンセプトなんて思ってない人もいるわけですし

  11. 何度か読んで意味がわからないところがあったけど、ようやく分かった。
    私は、西尾さんの「なぜ持ち時間の変更が可能なのか。」はただの説明(肯定文)だと思っていましたが、やねうらおさんは反語という認識ですね?一応どちらでも意味はつながるけど、どうなんでしょう?みんな反語読みなのかな?

    • 私も時間変更ができる根拠を示していたのか思っていました。反語として解釈しているということは、やねうらおさんと何か個人的なやり取りでもあったのでしょうかね。

    • 西尾先生の一つ前のツイートがこれです。
      https://twitter.com/nishio1979/status/581299826127605762
      この直後に日本将棋連盟からドワンゴの担当者経由で「実況は控えて欲しい」との連絡があり、そして本記事で引用した西尾先生のツイートの直後、また、日本将棋連盟からドワンゴの担当者経由で「持ち時間の変更はしないで欲しい」との連絡がありましたので、まあ、本記事での意味なのだと思います。

      • 返信どうもです。
        私はやはりどちらの意味とも断定できないと思います。西尾先生のツイートで分かることは
        1.西尾先生はやねうらおさんのツイートをタイムリーに確認してる
        2.西尾先生は「対局中の実況」に否定的
        だけです。やねうらおさんの対局用のツイートはこのブログで予め公開されていたので、片上理事やドワンゴの人がチェックしている(片上理事等に見せた)可能性も十分にあります。(そんなシビアなタイミングじゃないですよね?)
        また「対局中の実況」に否定的で、時間変更に肯定的でもおかしくはありません。西尾先生はコンピュータ将棋に理解があり、電王トーナメントの解説もしていたので、ブログ本文のような設定をしていることを理解している可能性もあります。(これが根拠で時間変更に肯定的とは言えませんが。)

        西尾先生がやねうらおさんのツイートを見るたびに、片上理事に電話(メール)すると言うのも面白い図ですね。

  12. 廃人ゲーマーの川上会長にしては不出来なルール設定ですね。連盟の意向もあるのか知らないですけど。谷川会長は「「貸し出しありで、ソフトの改良もありで」にしたかったけど、川上会長に押し切られた」と言ったらしいですけど。詳細は闇の中…

  13. やねさんと西尾先生とで、論点が噛み合ってないように見受けられます。

    やね「持ち時間を(ルールに沿って)変更するのが何故悪い」
    西尾「なぜ持ち時間の(貸し出し時設定からの)変更が可能なのか。」

    • 西尾先生の主張が、それだとしても、「貸出時にこう設定してください」というのを開発者がイベント主催者に申告していない部分(持ち時間設定等)は、やはり当日変更できるとルール上は解釈できると思います。ここを固定化させたいのなら、貸出時にイベント主催者は開発者に確認すべきだったでしょう。HTの設定とか、HT offだと秒読みで切れ負けするソフトもありますし…。

  14. え?事前研究で持ち時間の短い将棋も練習してたんじゃないの?5時間将棋で連日指していたら社会生活に影響しまくるでしょうが。
    たとえ序盤だけ指すとしても数時間はかかると思うんだけど。それとも馬鹿正直に練習していたサトシンを連盟はバカにしてるのか?
    中川理事が申し入れたのか?セクハラ担当だと思っていたが、コンピューターにも詳しかったのかw

  15. 対局お疲れ様です

    持ち時間設定を大幅に変更すると、指し手が変化して事前貸出での研究の成果が生きなくなる可能性があり、
    それだと「事前貸出ありで、それで人間側は勝てるのか?」という趣旨に反するとのこと。

    これはまったくその通りです。

    しかし、
    やねうらおさんのおっしゃることもまた正しいように思えます。

    自身の見解は、
    普通に考えれば、趣旨にそってルールが作られるわけですから、
    趣旨を優先して考えるべき」
    と思います。

    それより言いたいのは、将棋連盟が考え出したあろう
    「事前貸出」についてです。

    事前貸出が、どういうものか視聴者の方に正しく十分に伝わっていないことです。
    ごまかし」に結果的になっています。

    事前貸出をするとは、どういうことになるのか?
    ソフトの穴を探しだし、ほとんど負けないようにゲームを進めることができるように思います。(正しいですか?)
    万一想定した局面を外れても、クセを逆手にとり勝ちやすくできるように思います。
    (やねうらおさんのブログからの印象です)

    ここをはっきししたいですね。まず。

    このトピックの原因も、この「ごまかし」が引き起こした、視聴者の方と開発者の方のずれにあるように思います。
    原因と言うより、トピックの関心に対するやねうらおさんと視聴者の方の温度差ですかね。

    なんか必死だな」 という素朴な疑問
    なんでそこまで必死なの?」
    時間がどうかしたの?」 もうトピックに乗れていない方まで

    やねうらおさんがこだわる動機も理解できない方が大半と思います。

    将棋連盟は、本当にうまくごまかしたと思います。
    勉強になりました。

    それより、将棋連盟のコンピューターに負けることの懸念というより、恐怖 でしょうか。
    それがなんかかっこわるいなー思います。

  16. 明確なルールにしないで阿吽の呼吸ってのが将棋連盟の基本みたいですから仕方ないですかね。そのために立会人がすべてのルールに勝る(俺がルールブックだ)扱いなわけですし。

    角ならずで勝った永瀬氏がルール上は相手が王手を無視したら反則負けにも関わらず「立会人が無効と判断されたら仕方ない」と言ってました。

    要は黙って設定変えるか、遅刻すればよかったんですよw 後に物議をかもしたら続きはリベンジマッチでとすれば良かったんですw

Yakitori へ返信する コメントをキャンセル

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です