電王戦Finalを終えて その7

前回の続き。

千田翔太五段の名刺

やね「(千田翔太五段と名刺を交換して)千田さんって最近、プロ棋戦で活躍されてますよね。将来、タイトルを獲得されるとこの名刺にプレミアがついたりして?」
千田「いやぁ、まだまだですよ…。」

将棋狙って千日手に持ち込めるゲームなのか?

千田翔太五段がfloodgateの棋譜をよく眺めているという話から、千田翔太五段を中心に千日手の話題に。

やね「将棋で千日手って、狙って出来ないものなんですかね。序盤で馬で飛車追い回すとか、終盤で(pinされている駒に)銀かけて、銀打って…みたな筋とか。」
千田「そうですねぇ…」

やね「将棋ソフトが強くなってきたら、自分が不利だと思ったら千日手で引き分けに持ち込む試合が増えるんじゃないかな?」
下山「昔からするとソフトの棋力は上がっていますが、そんなに千日手局が増えているという印象はないですね。」
やね「それに関して、何か統計的なデータってある?」
下山「自分は調べてないです。」

平岡「でも、ランダムプレイヤー(指し手を合法手のなかからランダムに選択)だと千日手引き分けにはほぼならないので、棋力が上がるほど千日手引き分けの確率が増えるというのは言えそうでは?」
下山「なるほど…。」

やね「でも、自分が不利だから千日手に持ち込みたいとして、相手も同じぐらいの棋力であれば、その手順は回避してくるだろうから、回避しようと思えば回避できる程度に将棋の指し手は広いのかな?」
平岡「棋風が違うとなかなか千日手にならないというのもありますね。」
やね「片方は(双方にとって)千日手が最善と思っていても、片方は千日手を打開して良しと思ってたりするからね…。」
平岡「ええ。」

やね「あとは、同一局面を4回で千日手成立だけども、つまり同じ局面について3回考慮することが出来るわけで、前回考慮した結果が置換表に丸々残っているとすれば同じ局面に対して3倍の時間を費やしていることになるから、(有利だと思っているほうは)何らかの打開手順を見つける可能性があるね。さらに言うと、例えば、2回目にその局面に遭遇したときに、何らか打開して良しだと思う指し手が見つかるとそれを指しちゃう。本当は、さらに長考すれば、その指し手では悪いということに気づくような指し手だとしても。つまり、同じ局面に1回目、2回目、3回目に遭遇するときに、一度でも何か打開して良しとなるような指し手に見えたらそれを指して打開しちゃうというのはあるのかな。」

やね「いまPonanzaって、レーティング4000ぐらいあるとして、これ以上強くなったら、中終盤で不利だと思ったほうが千日手引き分けに持ち込もうとするので、勝率が上がらない(レーティングがこれ以上伸びない)ということはないのかな?」
下山「Ponanzaはいまのところ、千日手はそこまで多くないので、まだまだ強くはなるのだと思いますよ。」

片上「え。レーティング4000って、将棋倶楽部24で?将棋倶楽部24って3000なにがしから勝っても1点しか上がらないんじゃ?」
やね「将棋倶楽部24のレーティングモデルはレーティングが離れていると1点しか入らないので、そのへんおかしい意味はありますが、同じぐらいのレーティングの人がつねに存在して、同じぐらいのレーティングの人と対局を続けるものと仮定した場合の話です。あるプレイヤーに76%勝つならそのプレイヤーよりR200高い。76%勝つプレイヤーに76%勝つならR400高い、みたいにしていくとPonanzaは計算上はR4000近いのかなと。」
片上「なるほど。であれば、まだまだレーティングの高いプレイヤーを想定できるんじゃないかな?」
やね「それが、棋力が高くなってくると、かなりの長手数まで読んで、自分がわずかでも不利だと思うと、狙って千日手引き分けに持ち込むようになるんじゃないかという話をいましてまして、であれば、引き分けばかりが増えて、76%勝つという行為自体が不可能になる可能性があるなぁと。」
片上「どうだろう?(狙って引き分けにするのはそう簡単ではないので)少なくともR5000ぐらいまでは、いく(実在できる)んじゃないかな。」

次回につづく

電王戦Finalを終えて その7」への26件のフィードバック

  1. コンピュータと人間にはまだ壁があって人間側は手法をスイッチしていますよね。
    それがなくなって隔たりがなくなったころにポナンザを倒す猛者が現れそうな予感がしてます。
    透過的にまんべんなくフルボッコにできる手法の開発によってまたメタが回るかもしれません。
    そうなったらレートは正規化されてもっと低くとどまるんではないでしょうか。

  2. 将棋というゲームの性質が、攻めた方が不利、という結論になると千日手がふえますよね。
    攻めた方が有利なら、千日手は増えないはずです。
    先に攻めた方が先に歩損になりそうですし、守りのコマが多い場所へ3~4枚のコマで攻めに行く。。。もし、後手が守りを固めて先手が攻めてくるのを待っている戦術が最善となったら千日手が増える気がします。
    さて、真実は如何に。

    • 先に攻めたほうが有利になるとは限らない局面がどれくらいあるか、そして、それらの局面をうまく回避できのるか、という問題に帰着しそうです。

  3. 将棋というのは基本的に勝ち負けのあるゲームで、現在の将棋ソフトも勝つ為の最善手を探索するようになっていると思いますが、
    勝ちを目的とするのでは無く「(負けない事は前提として)もっとも長くゲームを続ける事」を目的とするソフトが出てくれば、あらゆるゲームを千日手にする事が出来るようになるのではないでしょうか?
    極論ですが、盤上で再現しうる全ての配置パターンを一度のゲームで3度行えば、最終的に次の1手を千日手に絶対確定させる事ができるので…
    あと、コンピュータ将棋関連の対局では基本的に256手ルール等の手数上限が設けられる事も多いので、結果としてルールを利用するソフトという面白い物が出来上がるのではないでしょうか

    長文失礼しました。

    • 相手に余裕で勝つ棋力があるならば、形勢有利のときにわざと形勢を互角ぐらいに持っていくことで引き分けに持っていくことはやりやすくなりますね。私が作った接待ひよこ将棋はそれに近いはずですが、しかし終盤に突入してしまうと形勢互角だとコンピューターが判断していても即詰みなどが発生して勝負はついてしまうものでなかなか引き分けになりませんね…。

  4. 24点法なら入玉引分けもありますよね。24点法で将棋の神同士が戦ったら引分けになると思います。27点法は分からん

  5. 「ブラウザ版のやねうら王です。2015年3月下旬の公開を予定しています。」
    まだですか!

  6. やねさんのツイートで思い出しましたが、
    wikipedia(英語)のComputer Shogiのページに電王戦出場ソフトの開発者名が書いてありますけど、そこも「Yane Urao」と書いてあるんですよね。
    他の人は「Issei Yamamoto」という感じなので
    Yaneがfirst nameということになって完全に国籍不明ですね。

  7. 拝啓、やねうらお様。タカシです。(ウソです)
    最近お仕事がお忙しいのでしょうか。
    そろそろ次の記事を催促してもよろしいでしょうか。
                         草々。

  8. 場所がないのでここに書いておきます。
    http://pc.watch.impress.co.jp/docs/column/semicon/20150227_690458.html
    以前上記のような装置が開発されました。
    組み合わせ最適化問題を解くハードウエアだそうです。
    自分の一つの疑問は、これを将棋ソフトのアクセラレターとして使えないかというものです。
    あんまり詳しくないので、組み合わせを解くと以前やねさんが言ってたということだけをもとに引っ張ってきました。
    もし適応可能だったらものすごい高速化が可能だと思うのですが、いかがですか。

      • それは失礼いたしました。
        最適化が結構難しいという話なんですね。
        とりあえず、C言語系のライブラリがそろわないことには自分も手も足も出ません。組み込みは全くど素人ですし。
        個人的には既成関数選択型ツリーダイアグラムとか色々応用が考えられるので夢のある回路だとは思っています。
        なんか面白い応用が早く出てきてほしいです。
        しかし、科学者の言う深い位置にある自由エネルギーとはいったい何を指してるのかさっぱりですね。
        自分バカなので想像力の限界を恨みマース。
        まぁ、ゲーマの血があるのでそこに立った時に理解するかもしれませんが。
        おっと、余談が過ぎました。
        とりあえずPCIEのボードでも作ってみればいいのかもしれないですね。ライブラリとともに。

  9. やねさんいかがお過ごしでしょうか。タカシです。ウソです。
    仕事そんなに忙しいんですか?
    そろそろ旬が過ぎてしまう頃じゃないでしょうか。
    ネタの鮮度もなかなか重要なファクターだと思いますので、ぜひ。ぜひ。書いてください。
    これって大事なことですよね?

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