第32回世界コンピュータ将棋選手権 決勝

本日は、WCSC32(第32回 世界コンピュータ将棋選手権)の決勝日です。やねうら王は、二次予選を3位通過しました!本日も参加予定です。よろしくお願い致します。この本記事は、大会中、適宜更新していきます。

タイムスケジュール
・5月5日(木):3日目 決勝
9:00    開場
9:15    受付締切
9:15- 9:30 連絡・準備
9:30-11:40 1回戦~2回戦(65分×2)
11:40-11:50 食事休憩(10分)
11:50-17:15 3回戦~7回戦(65分×5)
17:15-18:00 成績発表・表彰式
18:00-19:40 後片付け
20:00    閉場

特設サイト
https://drhoshiken.com/wcsc/32/

ライブ中継
http://live4.computer-shogi.org/wcsc32/

YouTube公式配信
https://www.youtube.com/watch?v=hNjD6Ddilig

■ 実況が大変な件

WCSCには、参加者は入っておいたほうが良いよというZoomがあって、そこに参加していると、対局中に自動的にルームに呼び出されるんですけど(それはそれで他の開発者と交流できて良いなとは思うんですけど)、対局のためのオペレーションをしたり、次の対局のために定跡用のスクリプト書いたり、マシンが落ちてないか監視したり、公式の実況を見たり、たややんさんの実況を見たり(この時点で見ている実況がZoomを含めて3画面)、WCSC公式のSlackを見てサーバーに再ログインを要求されていないか見たり、将棋AIのDiscordでの書き込みを追いかけたりで、神経すごく使うわけですよ。

この状態で、ブログ更新しろとか言われても(誰も言ってない。自分が勝手にやってるだけ)、まともに文章書けないわけですよ。そしたら、「やねうらおさん、最近、文章力落ちたな」「やねさん終わったかwww」みたいな輩が出てくるわけですよ。

まあ、これ読んでるほうは「知らんがな」だとは思うんですけど、なんにせよ、そういう状況で更新しているブログであることを予め申し上げておく次第です。

■ 東横将棋さん決勝辞退の件

たややんさんの水匠と東横将棋さんの対局において、東横将棋さんが使う先手番定跡であるs-book_blackに狙い撃ちされたということで、たややんさんのYouTube実況でたややんさんが愚痴をもらす場面があり、色々物議を醸し出した結果、東横将棋さんが決勝参加を辞退されることになりました。

これだけでわからない人のために、もう少し詳しく書くと、このブログでも何度も取り上げているs-book_blackという非常に優秀な先手番定跡があります。現状のNNUE系の将棋ソフトやdlshogiの穴を狙っていて、この定跡にわりと嵌まります。

この定跡の作者自体はWCSC32の参加者ではないのですが、今回、その作者が、水匠と東横将棋さんの対局の10分前ぐらいに定跡をアップデートされました。この内容は、直前の水匠の対局を狙い撃ちするもので、そのことにたややんさんは疑問を呈されていたわけです。

まあ、そうは言ってもWCSC32のルール上は、その行為自体には何ら問題ないので、まあYouTube実況でそれだけ注目を浴びれば(たややんさんのチャンネルは昨日だけでチャンネル登録者数が600人以上増えてチャンネル登録者数1000人を突破しました)、そういうこともあるやろ、ぐらいの感じではあり、たややんさんも特に腹を立てておられるわけではないようです。たややんさんのDiscordへの投稿を以下に引用しておきます。

まあ、YouTubeの配信なので面白く伝えなくてはという部分もあって、熱くなってしまったのでしょうね。

ところが、s-book_blackに関して、どうやって定跡を生成しているかという部分に問題があるのではないかという話になります。この生成手法に関しては、以前このブログでも記事として取り上げました。

先手番専用定跡s-book_blackの生成手法 : https://yaneuraou.yaneu.com/2021/12/15/a-method-for-generating-s-book_black/

最新のdlshogiの公開されている評価関数のファイルは、ライセンスで、この評価関数を定跡生成に用いることを禁止しています。おそらく、s-book_blackの作者は、最新のdlshogiを使っていると思われるので、dlshogiのライセンスに違反していることになります。その定跡をWCSCでは使って良いのか、という議論に発展しました。

現状、s-book_blackの作者が最新のdlshogiを使っているというのは憶測にすぎないので、本記事でこれ以上のことは書きません。

また、東横将棋さんが決勝を辞退された件ですが、辞退の理由については私はわかりません。上の件と関係あるのだとは思いますが、参加が権利であると同時に、辞退するのも権利ですから、それを尊重すべきだと思います。

■ 水匠、決勝辞退の件

東横将棋さんが決勝を辞退された結果、9位だった水匠が繰り上げで8位となり、決勝進出に残りました。ところが、たややんさんも、決勝を辞退されました。これにより、Qhapaqさんの ख़ が繰り上げで8位となり、決勝進出となります。

■ ख़の読み方の件

ख़ ですが、読めなさすぎて、誰も本来の発音で読んでなくて、皆さん、Qhapaq(カパック)と呼んでいるようなので、このブログでも以下、Qhapaqと表記することにします。

■ たややんさんから本記事にツイート

■ Qhapaqさんから本記事にツイート

■ 決勝 8チーム

決勝 8チームを二次予選の通過順で簡単に紹介。

  1. 二番絞り
    // DL系。dlshogiベース。GCPでA100×16?
  2. dlshogi with HEROZ
    // DL系。dlshogi本家。HEROZの社内サーバー。おそらくDGX A100だと思うのでA100×8。
  3. やねうら王
    // 私のチーム。NNUE系。AWS c6a.metal。
  4. マメット・ブンブク
    // たぬきさんのチーム。NNUE系。Threadripper 3990X。
  5. S.Lightweight-EF
    // DL系。評価関数にEfficientNetを導入。UCB選択アルゴリズムに工夫あり。
  6. W@nderER
    // NNUE系。評価関数に独自の改造あり。
  7. 名人コブラ
    // 序盤DL系 + 中終盤NNUE系のハイブリッド。

  8. // Qhapaqさんのチーム。PR文書からはNNUE系かわからず。

こうして見ると純粋なNNUE系が3. 4. 6. (たぶん8.も)と4ソフトあるので、NNUE系もまだまだ戦えるな~という感じだと思いました。

■ 第1回戦

対W@nderER。昨日、やねうら王の最後の対局がW@nderERだったのですが、それと同じ序盤進行になってしまいました。定跡、ランダムで選ぶようにはなってるんですが、シュリンクしているせいで選択肢の幅が狭く、同じのを引いたようで…。😥

他のエンジン設定も昨日からいじってなかったので全く同じ進行で負ける可能性が高いです。やねうら王、どこかで変化してくれ~。

いや~。負けた相手でかつ昨日と同じく後手番なのに、エンジン設定そのままにしてたのはうっかりミスですわ。大会に参加される方は、気をつけてくださいね。

これしかし、やねうら王側の指し手を変化させる方法はないのだろうか。サーバー側に負荷かけて探索速度落としてやろうかな…。

W@nderER側が52手目で変化してくれた模様。ありがとう、W@nderER!勝敗の行方はともかく、同じ棋譜で負けるのが回避できただけでありがたいです。

その後、不利になることもなく、やねうら王が勝利しました。これは、結果的に見ると、「(前日負けたのに)エンジン設定を何も変更しない」が正解だったのかも?(そんな馬鹿な…)

■ 第2回戦

対S.Lightweight-EF。昨日、s-book_blackの定跡で一気にやられたのですが、本局はやねうら王の先手番です。s-book_blackは先手用の定跡しかないので同じ変化でやられることはなくて安心です。

ちなみに、決勝は8チームなので対局が7回あるわけですが、奇数なので先手が5回、後手が4回というチームと、先手が4回、後手が5回というチームが4チームずつ存在することになります。そこで、二次予選の上位4チームが前者(先手5回)となることになっているそうです。よく考えてありますね!

いま速報が入ってきました。1回戦の結果は、先手番の2敗2分だったそうです。コンピュータ将棋では先手の勝率は7割以上とは何だったのか…。

さて。本局は、やねうら王の初手96歩でいきなりS.Lightweight-EF側の定跡を外しました。プロ棋士の先生も本大会に注目されているようなのですが、仮にやねうら王が上位に入賞したところで、やねうら王の初手96歩とか58玉とか58金右とかが今年のプロ棋戦に現れることはまずないでしょう😄

上図の局面でやねうら王は千日手手順を読んでいて、「あー、これ回避できないなー」と思っていたのですが、S.Lightweight-EF側が回避してくれたので打開できました。コンピュータ将棋、大会の持時間だと探索時のぶれで、こっちは千日手が読み筋で打開不可能と思っていても相手が打開してくれることは多々あります。(そして、それが無理な打開とは限らない) やねうら王も千日手をもっと打開するような探索にすべきだとは思っています。

ともかく、これで2勝。幸先がいいですね。

■ 第3回戦

Qhapaqとの対局。Qhapaqはわりと飛車を振るらしいのですが、やねうら王は初手78金。これは完全にお手伝い。(それでも飛車を振られてもまだ自分が良いと思っているやねうら王)

その後、やねうら王側の評価値は一度もマイナスにならずにそのまま押し切ってしまいました。今回、Qhapaqは飛車を振らせることに開発のリソースをだいぶ割いている感じで、強さ自体はそれほどでもないのかも?

あと、Qhapaq側の時間の使い方からNNUE系っぽい感じですね。(dlshogi系は、もっと序盤に時間を使いますので)

これで3連勝。

■ s-book_blackのライセンス違反の件

大会では今後、使わないでねということで?

昨日、やねうら王がs-book_blackの定跡局面で不利に陥った局面、10億局面程度調べただけではやねうら王は少し不利ぐらい(-150)にしか思ってなくて、検討のため数百億局面調べたところ、-500とかの数値がついたので、NNUEだと非常に評価が難しい(評価を間違う)局面に誘導されてるんだなと思いました。そういう意味では、今後、コンピュータ将棋の序盤研究とかで非常に有用な定跡集だなと思っております。

■ 今回のやねうら王の定跡は?

谷合先生が、「スーパーテラショック楽しみにしてたんですけど違うみたいで…?」みたいなことを放送で仰っていたのですが、これがスーパーテラショック定跡です!評価値ほとんどが0なのでランダムで選ぶと、こうなってしまうのです。

あと、探索部もGitHubでソースコードを公開しているもの、そのままです。それでこれだけ健闘してるの、なかなか凄くないですか?(先月の探索部の改良で+R70ぐらい強くなっています。)

■ 竹部さゆりさんが現地到着

■ 第4回戦

対名人コブラ。先手のやねうら王が9筋の歩を突き越した形での角換わり。

名人コブラはいまのところ0勝1敗2引き分けらしく、これはやねうら王としては勝たないといけない相手です。

ここまで上位チームと当たってないなーと思ったら、今回、二次予選の上位1~4位までのチームが決勝では第1~4回戦において、二次予選の下位5位~8位と当たるようになっているらしいです。なので、上位同士は第5回戦以降に当たるので最終局に向けて徐々に盛り上がるようなっているのだとか。

とりあえず、名人コブラにも勝利し、やねうら王は4連勝。この時点で無敗は二番絞りとdlshogi。(dlshogiは1局、引き分けあり) やねうら王は、二番絞りとの対局が事実上の決勝戦になる可能性が濃厚になってきました。

■ くらっきぃさんの公開されている定跡集

s-book_black以外にもやねうら王で使える優秀な定跡を公開されている人がいらっしゃって、くらっきぃさんもそのうちのお一人です。ここで紹介しておきます。

■ 第5回戦

対dlshogi。やねうら王は後手番です。二番絞りとの対局がおそらく先手番。またdlshogiはいま1引き分け。そう考えると対dlshogiはわざと千日手を狙って、二番絞りに先手番で勝って優勝、みたいな戦略は成り立つのかも…。(やりませんが)

あ。いま、教えてもらったんですが、二番絞り戦もやねうら王は後手番だそうです。😇

さようなら、俺のWCSC32…。

やねうら王は16手目で定跡から外れていますが、dlshogi先手で74手目までdlshogiは1秒指し。何か長大な定跡手順にハマってしまったようです。😥 dlshogi側が定跡抜けて、やや後手(やねうら王)悪いようで…。これでは勝てまへん。後手はかなり一本道の手順のようで。相掛かりの後手の変化はわりと狭いんですかね…。

その後、やねうら王が入玉を目指して270手目まで粘りますが討ち取られました。この将棋が270手目まで粘れるのかと驚きます。(これが256手ルールなら引き分けになっていたわけで)

dlshogi、入玉模様の将棋の寄せが若干遅いように見えます。WCSCのような320手ルールだと、勝っている将棋を引き分けにしてしまい、いまのdlshogiにはちょっと損なルールなのかも知れないですね。

■ 二番絞りの件

二番絞りは、本大会、定跡なしなのだそうですけど、現在まで二次予選でdlshogiに一敗しただけ。(あと二次予選でやねうら王と引き分け) 定跡を搭載していないとその分時間を消費するので損しますし定跡で嵌められるのが普通は嫌です。

二番絞りチームのマシンはわかりませんが、GCPでA100×16のインスタンスだとしたら、dlshogiよりスペックが上ですし、48さんのチームは、ResNet 40b(ブロック)のモデルの学習に長年取り組んでこられたので、序盤の評価精度が非常に高いのかも知れません。

序盤に自信があれば、定跡を搭載しないデメリットは持時間で損をするという点だけで、下手な定跡を搭載するぐらいなら、大会スペックのマシンで自ら定跡を切り拓くほうが優位に立てるということなのでしょう。

■ dlshogi系とNNUE系の持時間の使い方について

持時間の消費の仕方、dlshogi系のほうがNNUE系(やねうら王系)より本大会では時間を使う光景が見られるんですけど、本来、序盤の感覚に優れているdlshogi系のほうはそんなに使わなくていいはずなんですよね。あれは使いすぎではないかと私は思っています。

やねうら王のほうは、デフォルト設定(SlowMoverというエンジンオプションで調整できるが、これをデフォルトの100に設定したままで)本大会でいい感じに消費時間を使うと思っています。(そういう風に調整したつもり)

■ 第6回戦

対二番絞り。やねうら王側、24手目まで定跡。24手目の局面で、二番絞りは消費時間残り8分程度。やねうら王側、秒加算によって15分から16分に増えていて、持時間的にはダブルスコアになっています。しかし二番絞りは、これを物ともしないんですよね…。

組み合ったところで二番絞り 4分10秒。やねうら王はその3倍以上残しています。DL系なのに終盤、そんなに時間残さなくて大丈夫なのか?と思うのですが、二番絞り、ここからが強いんですよね…。あと、やねうら王は千日手を必死に読んでます。

二番絞り、もう2分残ってないですけど…。さすがにこれはdlshogiのタイムマネージメント、おかしいんじゃないかと。でも、これがここから負かされるのかーという諦念もあります。

千日手成立。二番絞りは残り時間が少ないこともあって千日手打開できないっぽいですね。やねうら王のほうは、わりと簡単に千日手手順を選んでしまうので(千日手スコアを-1に設定しているので)、こうなるんじゃないかと思っていました。(本大会で、やねうら王がこんな感じの千日手にした対局が少ないのが逆に意外で)

■ あれあれ?

いま第6回戦が終わったところなのですが、二番絞りとdlshogiが5勝0敗1引き分け。やねうら王は4勝1敗1引き分け。4位は2勝2敗1引き分けのマメット・ブンブク。ということは、次の対局でやねうら王がマメット・ブンブクに負けても3位は確定。次のdlshogiと二番絞りの対局で勝ったほうが優勝。やねうら王が次の対局で勝っていればソルコフ勝負になるので二位もある?ない?

このdlshogiと二番絞りの戦い、引き分けた場合ソルコフ勝負(ソルコフが勝っているほうが勝ち)になるのですが、(正確な計算はしていないものの)おそらくdlshogi優勝と言われています。ということはdlshogiは千日手を狙いますな。(私なら)

あ、もしかして48先生のチームに千日手で優勝決めるムーブは、WCSC29の時のやねうら王チームの再来ですか?!

■ 二番絞りがdlshogiに負けたら…

二番絞りがdlshogiに負けて、やねうら王がマメット・ブンブクに勝った場合、やねうら王は二番絞りと同じく5勝1敗1引き分けとなり、しかも敗北が同じ相手(dlshogi)で、しかも直接対決で引き分けていて、しかも同じ5チームに勝っているという不思議な状況になります。この場合、ソルコフは同じになる?!

その場合、WCSC22のルール(第22条)によると、2次予選順位で決まるようで、二番絞りが2位、やねうら王が3位になるようです。

ということは、やねうら王が2位以上になるケースはなさそう。現時点でもう大会3位確定ですか…そうですか…。

■ 第7回戦

対マメット・ブンブク。たぬきさんのチームです。師弟対決?!

マメット・ブンブクは、Threadripper 3990X(64C128T)だと思うので、マシンスペック的にはこちらが勝っています。(こちらAWS c6a.metalなので192vCPU)

そういう意味では、これは勝たなければいけない戦いですね。

現地のたややんさんによると、マメット・ブンブク、AWS c6a.metalで同じマシンだとたぬきさんから聞いたそうです。同じスペックかー。なら、負けてもいいかな。😁

あのさぁ。やねうら王さんよ。プロ棋士の先生が注目している本大会、上位のソフトから序盤を勉強させてもらおってもらって、この棋譜見た時にお茶吹き出すでしょ。どこのプロ棋士が、これ見て、「よっしゃNNUE系世界最強のソフトやねうら王の序盤を真似したろ!」ってなるん?

// もしかして、近年の世界コンピュータ将棋選手権の決勝で初手58玉は初めてかも知れん。

スーパーテラショック定跡について初見の人のために説明しておきますと、やねうら王のスーパーテラショック定跡においては将棋の結論は千日手だと思っているので(ほとんどの指し手が引き分けである評価値0)、先手の利なんてものは存在しないとやねうら王は考えているのです。先手58玉は1手損しますが、それは後手番になるだけで他に明確な損はなくて、つまりは評価値0で、アリだと考えています。

マメット・ブンブクとの対局は172手にてやねうら王が勝利しました。師弟対決、面目は保った感じ?

■ 初手58玉について

昨年の大会でW@nderERがやっていたようです。
http://live4.computer-shogi.org/wcsc31/kifu/WCSC31_F2_WND_PAL_1.html

■ dlshogi VS 二番絞り

dlshogiが直接対決を制して優勝を決めました。ここ近年のdlshogiの躍進は凄まじいですね。どうもdlshogiの逆転勝ちのようなのですが、なんと二番絞りの読み抜けだそうで…。

■ 大会を終えて

先月、わりとたくさんソースコードをいじった。それらはすべてやねうら王のGitHubに反映させてある。本大会には、やねうら王のGitHubのソースコードそのままで出場している。あと、評価関数は公開されている水匠5を用いている。チームメンバーのたややんさんからは水匠6の評価関数の提供を受けたのだが、私の計測環境では強くなかったので採用しなかった。

ともかく、

・公開されているやねうら王の探索部
・公開されている水匠5
・カスみたいな定跡(自分ではカスではないと信じているのだが、初手58玉を見てそう思わない人がいるのか?)
・AWSで誰でも借りられるインスタンス(c6a.metal)
この4つの組み合わせで、世界大会 3位になれるということを自ら証明してしまった。

これを見て、やねうら王を使って大会に参加する人が増えますように!

やねうら王を応援してくださった皆様、ありがとうございました。

※ 本記事はこれでおしまいです。

第32回世界コンピュータ将棋選手権 決勝」への33件のフィードバック

  1. 某掲示板でも某定跡について賛否両論ですがとても難しい問題ですね…
    生成された定跡の権利関係って決定版と呼べる結論がありますか?
    開発者の方目線での見解をお聞きしたいところです

    • 法律的に専門的なことは私にはわかりません。s-book_blackは素晴らしい定跡だと思っているので、こういう定跡の作成者の方と開発者がうまく協力していけると良いとは思うのですが。

  2. 仮にライセンス違反した方法で作成された将棋 AI に有用な情報(定跡)が公開・配布されていたとしても、それを使ったAIや人間が対局した棋譜は覆水盆に返らずで、その情報の伝播を阻止するのは基本的に不可能な以上(例えば floodgate なんかで流されて強ければ最新のソフトには影響を及ぼす)、s-book_black みたいな黒やグレーと推定されてしまうような存在が現れると、s-book_black の作者さんにそのライセンスに関する責任があると推定されるとはいえ、難しい問題ですよね。明確にライセンスに違反していなくとも、それを使って学習した人間の棋譜は確実に影響を受けますし、山岡さんのライセンシングしたいこと(人間が自分自身の棋力向上のために使うのは OK だが、コンピュータ将棋で対戦相手に使われるのは嫌だ、営利目的も嫌だ)は理解できるけれど、それは厳密には両立不可能だということの表れなんじゃないかと思う今日このごろ。
    自作の(自己満足のための)定跡管理&可視化ソフトを作っていて、途中経過を公開しようかなと思っていたのですが、どうしてもこういうライセンスに対して、グレーというか、曖昧になってしまうので、可視化がどんな感じになるのかを公開せずにいる…

    • ふかうら王の評価関数、dlshogiの公開されているのと同じぐらいの強さなので、ライセンスでそのへんの縛りをせずに公開しても良いのですが、勝手にYouTubeで評価値放送に使われるとそれはそれで嬉しくない意味があって、ちょっと公開を見合わせています。

  3. 他者の成果物を活用するという行為においてライセンスを順守しているか?という部分を十分に信頼できないならば、それには触れてはいけない、もし意図せず取り込んでいたならばそれを取り除くというのがフリーソフトウェアやオープンソース界隈における普通の対応ですし、何より権利者の求める条件を侵害している可能性があるものを使うか否かという倫理観が試されているんだと思うのですけど、そういった面はまだ成長途中なのだなというのが正直な感想です。

    • そうかも知れません。私としてはライセンスとかで使う側が窮屈にはなって欲しくはないので、なるべく自由に使ってもらえるようにしたいんですけど…。

    • 将棋指しが従うべき(従わざるを得ない)ルールはいくつかあって、
      ・著作者の考えるルール(作者がどう考えているか)
      ・法的なルール(作者の定めたライセンスは国家としてはどう判断されるか)
      ・物理的なルール(悪い人がそれをすることが可能か不可能か)
      ・OSS 界隈のルール(普通の OSS 界隈ではどう考えられているか)
      ・将棋のルール(合法手か)
      があります。お互いにその範囲は一致しないわけですよ。しかし、あるソフトウェア・ハードウェアが「最強の将棋指し」であることには、基本的には「将棋のルール」と「物理的なルール」しか関係しないわけで、「著作者の考えるルール」「法的なルール」「OSS 界隈のルール」とは関係なく存在しえて、その存在が指した棋譜(≈ 定跡)の伝播は将棋というゲームの性質上「将棋のルール」と「物理的なルール」にのみ従って発生し、かつ、定跡は「最強の将棋指し」であるソフトウェア・ハードウェアと分別不可能なわけですよ。ですから、私は、この問題は成長途中とか、倫理観の問題というよりは、将棋であることの問題というか、2人プレイの完全情報ゲームと「著作者の考えるルール」「法的なルール」「OSS 界隈のルール」の間の問題、つまりは、「著作者の考えるルール」「法的なルール」「OSS 界隈のルール」が不完全であり成長途中であることの問題だと考えています。

  4. いやyoutubeで(ご本人か判りませんが)

    suimon_fan ​S.Lightweightさんには昨日までの将棋でs-book_blackを採用していただいていましたが、この定跡作成にはdlshogiを使用していますのでライセンス違反の可能性があります

    という書き込みがありましたね。ご本人なのかなりすましなのか…

  5. Twitterでも名言されましたし、使用した側は爆弾仕込まれた感あって、これなんとかしないとまずいでしょうね。

    ※OSS界隈のルールの根幹はライセンス、つまり法的根拠に基づく権利者による使用許諾ですから「ルール」と言っても法的根拠のある強力なルールなんですよ。

    • まず、dlshogi モデルファイル自体のライセンスは、OSS では一般的なライセンスではないわけです。ですから、そのライセンスが仮に作者が国家に尋ねたときにどういうふうに法的な判断がされるかは不明なわけです。その点において、dlshogi モデルファイルのライセンスは強力な法的根拠・解釈がないわけです。
      さらに、dlshogi モデルファイルではない存在、一般的に強力な法的判断のされたことのあるライセンス下にあるソフトウェア・ハードウェアがあったとして、その影響を受けた将棋指しの影響を受けないようにするのはいくら法的に禁止されたとしても、物理的には困難だということです。情報統制されてない限り無理なわけです。
      極端な例を持ち出せば、新型コロナウイルスを広めてはいけないという法律を作っても、新型コロナウイルスは広がってしまうわけです。新型コロナウイルスを広めたくないなら、新型コロナウイルスの作者は新型コロナウイルスを自分の体内に閉じ込めたままにしておかなければ、封じ込めるのは不可能だということです。一度広がってしまえば、そのプロセスは自然法則にしか従わず、法的な規則とは関係がないのです。
      だから、法に欠陥があるのだ、もしくは、最初に作者が設定したライセンス、つまりは部分的に公開し、部分的に非公開にする、というのは不可能だから、全部を公開するか、全部を非公開にするのが、窮屈かもしれないが、誰もが平和だ(誰もが法を犯す余地がない)、という意見です。
      結局は棋譜の著作権の問題の話になると思います。いくら棋譜(≈ 定跡)の著作権(もしくは独占権)を主張しても(仮に国家に認められたとしても)、最強のゲームプレイヤーを獲得しようとする営みと不分別だから、それを認めてしまうと、ゲーム自体が消えてしまうということです。

      • ですから、なんとかしないとまずい(ライセンスを破るかもしれない)とはいえ、自然法則に逆行するような国家の法律をどうするかという話と関係する話で、日本国内においては、面倒くさそうで判断を先延ばしにされている?話なので、なおさら面倒くさいわけです。

  6. なんとかちゃんねるでも話題にありましたが、floodgateのmodel-dr2モデルに関するソフトの棋譜を使用していると明言している水匠などもアウトになるのでしょうか?

    • dlshogiの山岡さんが公開されている教師データは別のライセンスなので本件のような問題はないです。

      もともと山岡さんがmodel-dr2のライセンスを厳しくしたのはYouTubeの某評価値放送に対する対策で(これは、我々からお願いした意味があります)、将棋ソフトの開発者の開発の邪魔がしたいわけではないと思いますよ。

  7. A「大会にでるソフトの定跡作成に使わないねで」
    B「OK、大会には出さない個人的な定跡作って公開するよ」
    C「その定跡が本当に強いのか、floodgatesで確認するよ」
    D「大会用にfloodgatesから引っ張ってきた棋譜で定跡作るよ」
    A「Dさんアウトー」
    もうfloodgatesの棋譜は汚染されてるから定跡には使えないのね、GPL汚染と一緒か。ある意味では賢い戦略なのか。

  8. >最新のdlshogiの公開されている評価関数のファイルは、ライセンスで、この評価関数を定跡生成に用いることを禁止しています。

    まず、このような他者への制限が権利者に可能なのかどうか……Wordで作成した文書やVisualStudioで作成したプログラムに、MSが制限できるのか?

    当事者間の契約上は……公序良俗違反でなければいちおう可能です。

    しかし、評価関数ファイルのライセンス違反&著作権法違反の再配布を拾ったり盗んだりした人は、物権的な著作権法上の拘束のみで、契約上の上乗せ拘束を受けませんから、そこで定跡ファイル作成しちゃえば、その定跡ファイルには制限がかかりません。

    すると、まともにライセンス受けて契約上の拘束受けるほうが不利やんという変な状態になります。

    ということで、物権的な著作権法上の拘束に、上乗せして契約上のライセンス拘束を掛けるのは、有償で違約罰がないと運用難しいなあと。

    • そもそもソフトウェアが生成した棋譜(から生成された評価関数や定跡)が著作権法の拘束を受けるのか(著作物として認められるのか)という点が出てくる気がしますが・・・

      • 普通に考えると、ソフトウェアによる定跡生成は思想感情を表現したものでないので著作物ではなく、著作権法の制限にかからないですね。
        テルミンを弾くようにリアルタイムでパラメーター調整しつつ定跡生成したりはしないでしょうし……

  9. >3. コンピュータ将棋の大会向けに本モデルを使用する場合、・定跡生成に使用することには抵触すると思われます。

    >大会では今後、使わないでねということで?

    作られた定跡の利用は法的には制限されないです。
    作曲ソフトをライセンスに違反しながら使用して作曲された曲であっても、リスナーには関係ないのと同じです。
    倫理的側面は別問題ですが、オープンソースで公開しながら、大会で自分に不利に使うなというのも、公共の知見を集めて切磋琢磨してよりよいものを作るというオープンソースの思想に反するようにも私は思います。

    また、Suimon_fanさんのいうように、定跡を生成する過程が私的使用であって著作権侵害がないのであれば、その成果物の頒布も自由なはずです。
    そもそも、公開を前提とする定跡生成過程が私的使用には該当せず違法なのか、完全に適法であるかの二択かと。
    あまり例がないのですが、私的使用の範囲は家庭内などの狭い範囲に限るので、公開前提の定跡生成目的は私的使用じゃない気もしますね。

  10. 経産省「AI・データの利用に関する契約ガイドライン V1.1」の221-222頁
    https://www.meti.go.jp/press/2019/12/20191209001/20191209001-1.pdf 

    学習済みパラメータは大量の数値データであって、創作性等が認められず、通常は知的財産権(著作権等)の対象にはならない可能性が高いと考えられるし、ノウハウについては、秘密管理性、有用性、非公知性の要件を満たす場合に、営業秘密として一定の保護を受ける場合があり得るにすぎない。

    とあるので、そもそもの評価関数や、それから生成された定跡の使い方を(著作権やその存在を前提としたライセンスで)拘束するのは無理がある気がしますね・・・

  11. なんとなくなんですけど、「定跡生成の禁止」と「定跡作成の禁止」って、違う気がするんですよね。自動で生成するために使うものか、そのファイルを使って1手ずつ調べるかの違いという意味で。というか、後者がダメだったら、「局面について調べるのはいいけどファイルにまとめるのはダメ」っていう、なんかなぁ……っていう状態になっちゃいそうで(著作権法ではデータベースの権利も認めているんで、そういう意味でわからないではないんですが………)。
    なので、作者さんが、両方の意味で「禁止」と言っているのかなぁ……? というのが、元図書館司書としては(笑)気になるところです。

  12. 評価値0で同じなってることが問題で、千日手でも打開されたときの勝率が90%のと51%のとでは評価値を変えたらよさそう。

      • お互いに打開したときの勝率が50%未満だから打開せずに引き分けで0と判断してるんじゃないんですか?
        そうでなく、打開したほうが良くても引き分けを選ぶという評価になってるなら、間違いでしかない。

        • > お互いに打開したときの勝率が50%未満だから

          その「勝率」は、期待勝率であって、実際の勝率ではないし、実際の勝率をその時点で正確に予測することは不可能なので、期待勝率に基づいて計算するしかないし、期待勝率である以上、実際の勝率とは誤差があるし、誤差がある以上、打開したほうが勝率が50%より高かろうと、そんなものは打開する前にわかることではないし、要するに何も間違ってはいない。

  13. やねさんはもうNNUE型の評価関数の学習はされないのでしょうか?(探索部の改良がとてつもなく凄いことは承知です!)
    昨今の評価関数は既存の評価関数で教師作って上書きで学習したりfloodgateやdlshogi公開局面を活かしたものばかり(というか全て?)な気がしやす。もちろん、強くする上で最短で最適解だと思いますが、似たりよったりでリゼロ評価関数のようにロマンがないような‥
    この時期でもなおrezero8や将棋神付属のやねうら王を使用している1ファンとしてやねうら王評価関数を期待している次第でございます。
    数年前の優勝版のやねうら王評価関数の公開も機会がありましたら期待期待(2度書く)しております。

    ファンより

    • 学習遅いので学習にPyTorchを使うものを作りたくて、でも強くなっていることをもっと正確に計測できる環境を用意したくて、なんかそのへんの作業がなかなか進まなくて止まってました。最近、ちょっとそこに進捗があったので新しいことをやっていけると思ってます。

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