WCSC35(第35回世界コンピュータ将棋選手権)、皆様、お疲れ様でした！やねうら王もエンジョイ勢として(?)参加してきました。

昨年は、私はKomafontさんと『Ryfamate with やねうら王』として出場したのですが、今年はそれぞれが自分の育てた評価関数で出場しようということになり、袂を分かつこととなりました。(シード権は、Ryfamateにお譲りしたので、やねうら王は一次予選からの参加)

そう言えば、私はたややんさんと水匠チームとして大会に出場したことがありますし、たぬきシリーズのたぬきさんとは密に連絡を取り合っていますし、このたややんさん、たぬきさんとKomafontさん、私の4人がそれぞれ別のチームとして自ら育てた評価関数と独自の定跡で出場し、それぞれが決勝に残り、それぞれ1位、2位、4位、5位となったのは快挙と言えるかも知れませんね。

今回はNNUE系の将棋AIに昨年からわりと大きな技術革新があり、NNUE系は昨年から+R200ぐらい全体的に上がっていると思われます。

一番大きな技術革新は、知識蒸留と言う手法です。

具体的には、DL系の将棋AIでNNUE用の教師の評価値をつけなおします。(この手法は、re-evalだとかre-scoreだとか呼ばれています) 従来のような教師生成時の探索は不要で、DL系で推論を一度するだけで1つの教師局面の評価値をつけなおすことができるので、1秒間に数万局面の教師局面が作れます。この手法は、たぬきさんによって導入されました。

DL系で評価値をつけなおすと何故強くなるのかについては、私はよくわかっていませんが、おそらく評価値のぶれが少なく、(機械学習で勾配降下法を用いるときの)勾配が安定するからではないかと思われます。

やねうら王の支援者向けのNews Letterのなかで水匠10beta1,beta2,beta3を配布してきましたが、今回、たややんさんのご厚意により、今月下旬に発行するやねうら王News Letterで『水匠10』の評価関数ファイルを配布できる運びとなりました。(FANBOX 3500円/月以上、GitHub Sponsors $25/month以上)

水匠10beta3からも少し強くなっており、また、WCSC35で2位だったINUGAMIよりも強いようです。

なお、今月下旬に配布するのは、『水匠10』の評価関数ファイルです。『水匠10』は、やねうら王の探索部からさらに独自の改良をしてあるそうです。その独自の改良を吟味して、やねうら王のほうにも取り込む予定です。(この新しくなった探索部は、来月のやねうら王News Letterで配布できればいいなと思っています)

あと、本日発行したやねうら王News Letterにて、WCSC35でやねうら王が用いた新ペタショック定跡220万局面を配布しました。

これは、1局面1t(t : スレッド) 2億ノードにて思考させて生成した定跡です。WCSC35の決勝では、dlshogi(dlshogiで1局面につき大会と同じぐらいの時間探索させた330万局面の定跡を持つ)に対してやねうら王は後手番で当たりましたが、dlshogi側の持つ定跡を上手く外して千日手っぽい変化に持ち込みました。そのあとやねうら王側が打開して負けたのですが、dlshogiの山岡さん曰く「(本局に関して言えば)dlshogi側は定跡では完敗」とのことでした。

このやねうら王の新ペタショック定跡は、今後しばらくは毎月50万局面程度ずつ掘っていこうと思っています。こちらもやねうら王のNews Letterで配布していきますので楽しみにお待ちください。(Xeon 2698 dual×4台 + AMD 9950X × 4～8台で掘っていきます。電気代が月10万円ぐらいかかっています..)

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