プロ棋士は将棋ソフトが無くても困らないのか?

将棋AI界隈に対して、熱量の高い将棋ファンからよくわからない敵意を向けられることがある。

「長い将棋の歴史のなかで、将棋ソフトなんか無い時代からプロ棋士は脈々と将棋の技術を研鑽してきた。将棋ソフトなんてプロ棋士には全く不要で無くても何も困らない。将棋ソフトは将棋界に寄生するだけの寄生虫の癖にその開発者は偉そうにすんな。」みたいな意見である。

この世から将棋ソフト(将棋AI)がすべて無くなった世界と、いまの世界とを比較するならば、「将棋ソフトが無くてもプロ棋士は困らない」には私も同意する。将棋界はいままでそうして命脈を保ち、歩んできたのだから。

しかし、将棋ソフトは誕生してしまった。誰かが、トッププロより強い将棋ソフトを生み出してしまった。(その経緯についてはここで触れない。)

そうすると、将棋ソフトを活用しているプロと活用してないプロとの差が生じる。そして、少しでも速いパソコンで将棋ソフトを動かした方がより良い指し手を出力するので、こぞって良いPCを買おうとする。

渡辺明元名人が、2021年に130万円のパソコンを買ったのは有名な話だし、それに倣って他のプロ棋士も100万円以上の高価なパソコンを購入している人が後を絶たないのが現状である。

それなのに「無くても何も困らない」ものに渡辺明元名人は130万円も払ったとでも言うだろうか?それって余りに渡辺明元名人やプロ棋士のこと(その購入したという判断力)を馬鹿にしてないか?

このように熱量の高い将棋ファンはプロ棋士に傾倒する余り、プロ棋士の将棋の能力を過信しすぎてしまうところはある。プロ棋士本人たちが将棋ソフトが必要だと判断して高い金を出してこぞってパソコンを購入して将棋ソフトを活用して研究していると言うのに、「プロ棋士は将棋ソフトなんて要らない!無くても何も困らない!」とファン側が言ってしまうのはどうなのか。いや、その言いたくなる気持ちはわかるんだけどさ…。全部の将棋ソフトをこの世から消し去って、昭和の時代に戻るのはいまさら不可能なわけでさ…。

思い返せば、将棋電王戦(2011年-2015年)の時も、「プロ棋士は将棋ソフトなんかに絶対負けない」、第一回電王戦で米長先生が負けたあとも「米長先生は現役棋士じゃないから。現役棋士なら絶対負けない」、第二回電王戦で佐藤慎一四段が負けたあとも「A級棋士なら負けることはない」、第二回電王戦で三浦弘行八段が負けたあとも「パソコンを667台(GPS将棋は大学のPCでクラスターを組んでいた)も使うのは卑怯だ。正々堂々と1対1で対決しろ」、第三回電王戦で森下卓九段が負けたあとも「プロ棋士はまだ本気を出していない」、屋敷伸之九段が負けたあとも「名人なら負けはしない。名人を出せ」みたいな意見は一部の将棋ファンのなかではずっとあった。

いや、気持ちはわかるし、応援するのはいいんだけどさ、将棋ソフト事前に貸し出された(第三回以降、事前貸出があった)プロ棋士が「100回やって数回しか勝てない」とインタビューで言ってるのに、ファン側が「プロ棋士は絶対負けない!負けるはずがない!」みたいに言うの、一周回ってプロ棋士にも迷惑だからね?ファンチとなんも変わらん。

とまあ、一部の将棋ファンにとって、プロ棋士とは、鬼神の如く将棋に強い、気高く孤高の存在であると言うような膨れ上がったイメージがある。(将棋クエスト四段の私も、羽生さん、藤井聡太さんに対してそういうイメージは持っているから、それ自体はよくわかる)

やねうら王プロジェクトは支援を募り始めてまだ数日しか経っていないが、プロ棋士の方々もすでに何人かが支援をしてくださっている。だから、「プロ棋士は将棋ソフトなんて要らん!なくてもなんも困らん!」とか「お前なんておらんくても、プロ棋士はなんも困らん!」みたいなのは、ちょっと違うんじゃないかなと思う。

そのようなわけで、やねうら王プロジェクトに支援を検討していただける方は、このブログのメニューのところをクリックしていただけますと幸いです。

プロ棋士は将棋ソフトが無くても困らないのか?」への10件のフィードバック

  1. イラストレーターです。
    「あんたはイラストレーターなんだから、AdobeのIllustrator ソフトはいらなくね。」
    というのと同一ではないにしろ、似たようなものではないでしょうか。
    言いがかりっぽいと、アタシは思います。

  2. やねうらさん新年明けましておめでとうございます。
    電王戦時代はこういう声も多かったでしょうが、今は決着がついたと思っておりました。
    神格化はどの分野でも危険だと思いますね。
    でも、これもまた人間のある種の本能的な心理なのかな?とも感じています。そういう意味ではとても学びになりますね。

  3. 将棋ソフトに対して一種の恐怖感がファンにあるのでは?ソフトに将棋が解明されてゲームとして終わってしまうかも知れないと。例えば「角換わり」の後手は終わった・・・とか。本音はソフトは要らないではなく、今の強さで十分!これ以上開発して逆に将棋というゲームの面白さを壊さないで!ではないでしょうかねぇ。

  4. でも意図的に「人類VSソフト」の力の差を測らせずぼやけさせたり、「棋士VS開発者」の要素で煽ったりしたからこそ興行がうまくいったわけですよね
    多分世界中で行われた人類VSソフトの興行では一番成功したの電王戦じゃありません?
    IBMやGoogleだったら、タダで競技の宣伝をしてやるからトップ棋士貸してくれってなった後、2,3回対人戦やっておしまいだったと思いますし。

    • > IBMやGoogleだったら、タダで競技の宣伝をしてやるからトップ棋士貸してくれ

      Googleさん、電王戦の比じゃないくらい、めちゃめちゃ対局料も賞金も出してますよ…。

      > 勝者(勝ち越し者)は100万米ドルの賞金を得る。もしAlphaGoが勝利すれば、賞金はUNICEFを含むチャリティーへ寄付される[2]。賞金に加えて、李世乭は全5戦の対局料として15万米ドル、1勝につき2万米ドルを得る[1]。
      https://ja.wikipedia.org/wiki/AlphaGo%E5%AF%BE%E6%9D%8E%E4%B8%96%E3%83%89%E3%83%AB

      • Alpha Go の時めちゃくちゃ払ってくれたんですね>Google
        それでも将棋と比べて、一瞬で格付け完了状態になるのとどっちが良かったのか分からないですけども

  5. 社団法人またはnpo法人にできないですかね?

    そうすれば寄付金を税金控除できるので、棋士の方も寄付しやすくなるのではないでしょうか。

    • クラファンなどでありがちな問題として、返礼品がなければ寄付なのですが、そうでなければ税務上は寄付とはみなされない場合があります。
      今回のケースで言うと最新版やねうら王を返礼品としてダウンロードできるようにする場合、これは寄付とみなされない可能性があります。

      そこで、やねうら王プロジェクトへの寄付は私の会社の売り上げとして計上しています。なので、寄付する側は、寄付金控除どころか、全額損金算入しても問題ないです。(特にプロ棋士の方でしたら、将棋AIは、仕事のために必要な道具でしょうから…)

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