SNSの興隆とともに、SNSを中心としてオンラインの将棋大会が開催される機会も増えてきた。将棋ソフトがプロ棋士より圧倒的に強い現在、避けて通れないのがソフト指し問題である。
先日も、とあるオンラインの将棋大会で優勝した人がソフト指しではないかということで失格処分となった。
オンラインの大会であるのでよほどでない限りソフト指しの証拠を掴むのは不可能である。
運営の方は、大会後にその本人にその御家族を交えて面談をされたそうなのだが、それでもソフト指しなのかどうかの結論がはっきりせず、プロ棋士の先生の意見も聞きながら、最終的に失格処分とされたようである。
オンラインの将棋大会でそこまでのコストを運営側が支払わなければならないとしたら、将棋大会の運営って本当に大変なんだなぁと思う。
実際にソフト指しする人は、大会でもごくわずかな割合にすぎないのだろうけど、普通にソフト指しすると、その人が優勝してしまう。だから、すごく目立つし、この問題は表面化しやすい。
歴史的なことを言うと、ソフトがアマ四段ぐらいの実力しかない時代(20数年ぐらい前)にはすでにソフト指し問題はあった。Yahoo!ゲームの将棋やハンゲームの将棋などでも、ソフト指し問題があった。当時、運営の取り締まりが甘かったので、高段の対局室は両対局者がソフト指しというのも珍しくはなかった。
将棋倶楽部24や将棋ウォーズのような本格的なオンライン対局サイトでは、運営は、ソフト指しの取り締まりに力を入れているのだけど、あるユーザーがソフト指しと疑わしい時に本人と面談なんてことができるはずもなく、運営側は何らかのルールを設け、疑わしいと判断したらBAN(アカウント停止)するなどの措置を執るしかない。
だから、運営側は、利用規約に「(ソフト指しと)疑わしきは罰します」的なことを盛り込まざるを得ない。オンラインの将棋大会でも最近は大会の規約にそういう条項を盛込むことが多い。上で書いたオンラインの将棋大会でも参加規約にそんな内容のことが盛り込まれていたそうだ。
「ソフト指しかどうかを運営が100%正確に判定することは不可能なので、何らかの基準を設けてそれに引っかかったらBANするけど(誤BANだったら)ゴメンね!」ということである。
まあ、そういうルールで運営せざるを得ないから、あるユーザーがBANされた = ソフト指し とは限らないわけであるな。
では、何を以てソフト指しだと判定するのかという話になるのだけども、例えば、上に書いた大会であれば、まずはソフトとの指し手一致率であった。
しかし指し手一致率というのは、わりといい加減な尺度で、何のソフトを使うかによっても変わるし、どれだけの時間思考させるかだとか、マシンスペックとかによっても変わる。あと、定跡は一致しているとみなすのかみなさないのか、みたいな問題もある。最近は将棋AIを活用して作成した定跡DBを作って公開する人が増えているので、そういった定跡を研究して(覚えて)、大会で指す人もわりといるのだが、こういった場合、指し手一致率という尺度で見るとかなり高い数値が出てしまう。
公開されている定跡を抜けたところからどの程度一致するのかが重要なのだが、それでも必然的な進行のところは一致率が高くなるから、やはり指し手一致率というのは良い尺度とは言い難い。
将棋AI開発者のなかには、相手のレートを推測する手法を色々考案している人もいて、将棋ウォーズのようなしっかりしたアプリではそういう手法を用いてソフト指し判定をしているのだと思うけども(例えば、HEROZに以前在籍されていたPALの山口さんは平均パフォーマンスレートという指標を考案されている)、ソフト指し判定ツールみたいなのが公開されているわけではないので、一般の将棋大会ではいまだにソフト指しの判定には指し手一致率に頼らざるを得ない。
例えば、80手目まで定跡で進行して、そこから数手指して、そこで詰将棋局面になって即詰みで討ち取った場合、結局この数手がソフトの指し手と一致するのかということになるのだけど、そりゃまあ、必然に近い進行なら一致することはあるだろうし、この場合指し手一致率100%にもなりかねない。
ソフト指しの判定は、そのように指し手一致率でやるのが世間では一般的なのだが、このような原理なので誤判定もわりと起こり得るのだ。
まあ、そういう意味では(ソフト指しではないのに)ソフト指しと判定されるのは事故みたいなものなので、ソフト指しだと思われたくなければ、序盤の早い段階で既存の定跡を抜けるように指すべきだとは思うが、そんなことをしないといけないのかと言う…。
あと、将棋倶楽部24でも20年ぐらい前にソフト指しと認定されるのを回避するために序盤の数手だけあえて自力で変な指し手を指し、そのあと激指にバトンタッチするという手法が流行ったことがある。
そのように巧妙にやられたら、運営がソフト指しを炙り出すのはなかなか骨が折れそうだ。
一致率で判定というのは大いに反対なのですが、数値で何%という形で出るのでわかりやすくて頼ってしまう人が多いのでしょうね。はっきり正解という手法が確立されていない以上は。
(そういう手法が確立されても結局いたちごっこになるので公開しない方が良いのだとは思います)
棋風にもよるかもしれませんが、対局者同士の棋力に差があると上位者の一致率が高くなりやすいという傾向もあると思います。
(指し手の難易度が高くない局面が続けばアマチュア三段くらいでも最善手連発しても不思議でないと思います)
なんというか、AIが荒ぶってるアート界隈では、下手な絵や文や音楽でも、人間が介在してる感じが出ているものを良く評価していこうとする雰囲気が発生し始めてるような気がします。
将棋も本物の盤を前にして対面して、駒の音をパッチーンと立ててハードに指す対戦をする方がよいということでいいんじゃないかと。
WEBカメ等で参加者の姿を映してやるとか。
まあ参加ハードルが高過ぎて無理だろうけど、それくらいしないと防ぎようないよね。それでも完璧ってわけでもないし。
全ての局面で候補手1、候補手2,候補手3を入力させるとか
結局のところ対局”中”の不正を暴く決定的な方法は現行犯で暴くのみで、終わった対局について様々な統計的解析を行っても黒に近い灰色以上にはなりませんしね。
推定無罪の原則もありますし、不正を訴えられた側が訴訟する例も珍しくない中、大会運営側としては不正を判定してパージよりかは大会ルール違反としてのパージの方が低コストでしょう。
チェス界では、厳格に不正を排除したい大会は顔合わせ+持ち物検査+αで、オンライン大会は誤検知上等でとりあえずパージする、という感じになっていますね。
自分としてはオンラインでちゃんとした棋力勝負となる大会を開く事はほぼ無理ゲーで、やっぱりちゃんとした棋力勝負をやるのであれば従来の対面将棋でやるしかないと思っています。
一致率だけに頼ってしまうと、「ここぞという局面だけ参照する」ような、部分ソフト指しを判定するのはほぼ不可能になりそうです。
「詰み・必至・詰めろの有無を常に判定してくれる」だけの補助なども、一致率で暴くのは難しいでしょうねぇ。
>>オンラインの将棋大会でそこまでのコストを運営側が支払わなければならないとしたら、将棋大会の運営って本当に大変なんだなぁと思う。
誤BANは誤BANで相手によっては「社会的評価を低下させた」とかで訴えられるリスクも抱えるわけで、本当に割に合わないと思う・・・
ほんま、それ。