先週末、第5回世界将棋AI電竜戦TSECが開催された。毎回、このような将棋AIの大会が行われると御自分の作った将棋AIを公開する開発者が一定数おられる。
様々な将棋AIが無償で公開されるのは大変喜ばしいことである。数年後、数十年後に、2024年の大会に出場した◯◯は、こんな強さでこんな棋風でこんな定跡を搭載していたというように、あとになって振り返るのにもちょうどいいだろう。
このように上位の将棋AIが公開されると、「最強◯◯、インストール方法!」みたいなどこかのアフィリエイトブログに記事があがる。そういう記事は、インストールの仕方を丁寧に説明してくれているので、パソコン初心者にとってはきっとありがたいことだろう。
しかし、そういう記事では、やねうら王を探索部として使っていてやねうら王の実行ファイルが同時に配布されているというのに、必ずと言っていいほどやねうら王のGitHubにリンクすら貼られていないんだ。じゃあ、ユーザーはインストールしたあと、思考エンジンオプションの意味についてはどうやって調べるのだろう?やねうら王本体がアップデートした場合はどうやってそれを知るのだろう?それではあまりに無責任ではないだろうか。
公開している開発者は、記念碑的な何か、あるいは、歴史のスナップショットとして公開しているのかも知れない。つまり、その大会で使ったやねうら王の探索部 + 自作の評価関数ファイル + 自作の定跡という組み合わせであるな。確かに3つセットでひとまとめにして公開する意義はあるだろうし、それをダウンロードする側も、その大会に出場した◯◯ソフトというコレクション的な価値はあるのかも知れない。
そこまでは私も理解はできるのだが、やねうら王の実行ファイルを二次配布する時は、やねうら王のGitHubとそのWikiを同時に紹介して欲しいんだ。
やねうら王のGitHubには、Wikiがあって、そこに詳しい情報が掲載されている。インストール手順も非常に詳しく書かれている。実行ファイルもやねうら王のGitHubのReleasesのところからダウンロードできる。
やねうら王 GitHub
https://github.com/yaneurao/YaneuraOu
やねうら王 GitHub Releases
https://github.com/yaneurao/YaneuraOu/releases
やねうら王 Wiki
https://github.com/yaneurao/YaneuraOu/wiki
やねうら王Wikiには、やねうら王のインストール手順にしてもめちゃくちゃ詳しく書いてある。一度も見たことのない人は、一度クリックして読んで欲しい。
…といまなら胸を張って言えるのだが、以前からやねうら王Wikiはあったものの、昨年末の時点では、情報はそこまで充実していなかった。
それと言うのも、以前はやねうら王は、『将棋神やねうら王』という商用版をマイナビから販売していたので、そこと差別化する必要があったし、将棋ファン向けに公開しても、ITリテラシーの低いユーザーが一定数おられるので、ZIPファイルを解凍せずに実行したり、システムファイルを表示するようにエクスプローラーを設定していないから、.dllファイルが表示されておらずファイルコピーができていなかったり、マ◯フィーのアンチウイルスなんとかと言う悪名高いセキュリティソフトを使っていてそれが実行ファイルを隔離したりと、ともかく、そういうインストール難民みたいなのが一定数発生するので、そこに対して無料でサポートし続けるのは大変な労力が必要だから、私としては、そのへんを自力で解決できる程度の人にのみ使って欲しい意味はあった。
だから、いままで、やねうら王本体の二次配布にも目をつぶってきた。目をつぶると言うか、二次配布した開発者がサポートも勝手にやってくれるなら、ありがたい意味すらあると思っていたし、「最強!将棋ソフト!水匠インストール手順」みたいなアフィリエイトブログも、それでインストール難民が減るなら、助かるとすら思っていた。
しかし、昨年末からやねうら王プロンプトでGitHub Sponsorsにて支援を募り始めて、尽くその動線を奪われていることに気づいたわけだ。自分で虫除けスプレーを撒いて、虫が寄ってこない!と言って怒ってる頭のおかしいおっさんみたいで言うのが恥ずかしいところはあるのだが。
まあ、そうやって、支援者を募ったので、支援者向けにやねうら王本体の懇切丁寧なインストール手順を書いたテキストを私はせっせこ作成したわけだ。毎月、支援者向けにやねうら王News Letterを発行する際に説明を少しずつ追記してったので、インストール手順を書くだけで丸3日分ぐらいの労力を使っていると思う。そうやって出来上がったインストールマニュアルの集大成(?)を、やねうら王Wikiの「やねうら王のインストール手順」のページに反映させた。ともかく、そのページのインストール手順が詳しすぎるのは、このように支援者向けに書くという理由があったためで、最初からこれを書きなさいと誰かに言われたのなら私は早々に音を上げていただろう。
このインストール手順を詳しく書くためにいま公開されている有名な評価関数ファイルの評価関数タイプ(アーキテクチャ)をまとめて、その棋力を一つずつ計測していたのだが、やねうら王の最新の探索部(開発版)と組み合わせると昔の評価関数ファイル、意外と強いということがわかってきた。(これについては別の記事で書く)
まとめると、やねうら王の実行ファイルを自分が育てた評価関数ファイルと一緒に配布したいという開発者がいることは理解している。この記事の冒頭で書いたように、何年か後に振り返って、「2024年の◯◯ソフト」のように歴史のスナップショットとしての意味はあると思う。
しかし、後の世で、その時代の新しい探索部と組み合わせて使えると嬉しい人たちもいるし、その時に意外な強さを発揮するかも知れないし、インストール手順や思考エンジンオプションや探索部のアップデートなどの情報にリーチできるように、やねうら王の実行ファイルを二次配布する時や、やねうら王の実行ファイルが含まれているソフトをブログ記事で紹介する時は、やねうら王のGitHubとWikiの紹介もして欲しいのだ。(あくまでお願いレベルなのだが)
やねうらおう様が作成されたペタショック定跡finalについてご質問がございます。
githubの支援プランに登録をすれば今からでもペタショック定跡finalを入手することはできますでしょうか。
ツイッターで支援プランに申込みをした方がやねうらおうニュースレターでペタショック定跡を入手されたと知り、ご質問をさせていただきました。
GitHubで支援したあと、GitHubのID書いて私にメールくだされば対応させていただくます。
ありがとうございます!
先ほどGitHubで支援させていただきました!
これからメールをさせていただきますので何卒よろしくお願い申し上げます
もし良ければ、ペタショック定跡Finalがペタショックビルドされる前の、評価値付き形式の定跡ファイルを今月号のニュースレターで支援者向けに見せてもらうことは可能でしょうか。
やねさん自身は新たな評価関数で掘りなおすということで、前の定跡自体にはあまり価値を感じておられないと思いますが、ペタショック化の前後での変化を比較することでも、活用のしがいがあるのかなと思いました。
既に今月号のネタが決まっていたらすみません。
ペタショック化前の定跡、本日発行のNews Letterで配布しますね!
GPL V3 Section 6 d) より、やねうら王の実行ファイルが含まれているソフトをブログ記事で紹介する時は、やねうら王のGitHubのURLを紹介する義務があると思料します。弁護士ではないので誤っていれば申し訳ありません。