前回の電王戦出場バージョンのやねうら王との対局だけかと思っていたら、今回の電王戦FINALバージョンのやねうら王との1分将棋での対局がありました。「そこまで見せちゃうんですか?」と思うのですが、見せちゃうみたいです。
Labyrinthusの香上さん、曰く。
何か電王戦までの道というコンテンツが配信されてるのを最近知って見始めてるのだけれども、ドワンゴさんは本番への過程も充分コンテンツとしてなり得る事をようやく知ったみたいですかな。 #電王戦
— 香上 智@5/3~WCSC25参戦 (@kagami_tomo) January 18, 2015
さて、本局の動画をご覧ください。
※ まだ次の動画が公開されていないですが、やねうら王必敗なのでさすがに逆転はしないでしょう…。
本局に関しては、やねうら王が後手をもって横歩取り3三桂戦法を採用しています。この戦法自体プロの間ではあまり評判がよろしくなく(後手の角が使いにくいため)、近年のプロの採用例も数少ないです。
先手の横歩取りに対して後手は3三角と上がるのが普通ですが、やねうら王の定跡を生成しているときに、3三角のほうは3三桂よりかなり点数が低かったため、電王戦FINAL版のやねうら王の設定では3三桂以外指さないです。(おそらく、定跡生成時の探索深さが24では足りていないのでしょう。その後、1ヶ月かけて生成しつづけた定跡のほうでは、3三桂以外の指し手も選びます。)
私は電王戦FINAL用の定跡を生成していたときにこのへん突かれたら嫌だなーと思っていたのですが、まあ、決定的に悪くなるわけではないですし、後手番だし、「おもてなし定跡」なのでそれぐらいの損は仕方ないかなーと思っていました。しかし本局の進行を見ると超大悪手が出ます。
後手8六飛!
普通に飛車が詰みます。ひねり飛車の定跡書でよく出てくる飛車を詰まされる変化です。飛車を詰ませるまでに10数手かかるのでコンピューターは1分では読みきれないのだとは思いますが、10分あってもこういうパズルみたいな手順は枝刈りされてなかなか読みきれないと思います。
飛車が詰まされてはどうもこうもありません。3三桂と併せてゲームセットです。本当にありがとうございました。
対人戦という観点からは、もっと幅広く定跡を選択して指し手をバラけさせたほうが良かったのですが、コンピューターの序盤はまだ色々と粗があって、幅広く定跡を選択する(=1番目の候補手と2番目の候補手の差がある程度大きくても2番目の候補手の指し手を選ぶようにする)と、それが大悪手であることも多々あり、怖くて私には出来なかったんですね。いまでも、どっちにしたほうが良かったのかはよくわかりません。
序盤でMultiPVをして指し手をバラけさせているAperyも電王戦FINALバージョンとの1分対局でApery負けてますし(このシリーズの動画ではソフトが負けた局を取り上げて収録しているのかも知れませんが)、事前貸出ありの条件下でソフトが序盤を乗り切るのは大変ですね。
結局、序盤定跡はプロ並の棋力のある人が手で入力していくか(AWAKE)、桁違いの中終盤力のあるソフトが長い時間をかけて探索するか(ponanza)ぐらいしかやりようがないのかも知れません。
やねうら王はあと400ぐらいレーティングが上がれば定跡を生成しなおしたいです。
あと、本局から得られる知見として、コンピューターに考えさせた定跡は3三桂と8六飛みたいな手がセットになっていて、8六飛で後手良しと思っているから、3三桂を悪手だと思っていないというのはあります。要するに、コンピューターが良しと思っていて、かつ、人間から見てあまり得ではないはずの定跡をそのまま進めていくとコンピューターは何か変な手を指す可能性が高いということですね。(たぶん)
>10分あってもこういうパズルみたいな手順は枝刈りされてなかなか読みきれないと思います。
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