電王戦Finalを終えて その2

昨日の予告通り、色々書いていきたいと思います。今日の記事は記者会見前に他の開発者と話したこと。

平岡さんに「やねさんは、ほんま賢い」と褒められまくった件

やね「平岡さん、何食べてるんすか?」
平岡「(スポンサー提供の)バームクーヘンとプリン…」
やね「このあと打ち上げですよ?」
平岡「食べたかってんもん…」
やね「打ち上げはドワンゴの金で食べ放題ですよ?」
平岡「!!?」
やね「バームクーヘンとプリンなら鞄に入れて持ち帰ればいいじゃないですか。」
平岡「ほんまや!(゚д゚)」
やね「私はバームクーヘン2個、鞄に詰めましたよ?」
平岡「!!?」

このあと平岡さんが色んな人にこの件で「やねさんは、ほんま賢い!」と触れて回っていた模様。
そんなところ褒められても全然嬉しくないんですけど…。(笑)

西海枝さんはそこまで将棋が弱くない件

やね「(平岡さんのツイッター見たら)えらく早くに会場に着いたんですね?」
平岡「そうなんですよ。西海枝さんと将棋して遊んでました。」
やね「平岡さん、ウォーズ三段でしたよね…。弱い者いじめじゃないですか?(笑)」
平岡「それが、西海枝さん初段ぐらいあるんですよ。私、振り飛車党なので居飛車縛りでやると二段ぐらい落ちてちょうどいい勝負ぐらい。」
やね「あれ、そうなんですか?西海枝さん、10級ぐらいだと勝手に思ってました。」
西海枝「初段の免状欲しくて、頑張ってるんです。本買って定跡とか覚えて。」

免状がそんなに欲しいですか?

やね「免状、欲しいですか?免状取得資格だけで言えば私、六段の免状取得資格持ってましたよ?」
西海枝「六段!!?の免状?」
やね「免状の取得資格ですね。マイコミのオンライン認定で20問中19問正解したので五段の免状取得資格を得て、それが将棋連盟の創立81周年記念(※)のときにいまの取得資格+1段の段位を取れますとかメール来て、お金さえ出せば六段が取れるらしいかったのです。」
※ 将棋盤のマス目が81なのでその記念となる年。2005年。
西海枝「取らなかったのですか?」
やね「はい。六段の免状をいきなり取るためには初段から五段までの免状料が必要なんです。初段から五段までの免状取得料の合計が66万ぐらいかかりまして。」
西海枝「そ、、そんなに!?」
やね「そして六段の免状取得料が100万円」
西海枝「ひ、、ひゃくまんえん!!??」
やね「合わせて166万円…。」
西海枝「高いですね。」
やね「仮に166万円出して六段の免状取ったとしましょう。『六段の免状持ってます』と言うとどうなりますか?『あれ?この人、166万円出しちゃう人なんだ?』ってビジネスの世界で足元見られかねませんよ?(笑) 『六段の免状のために166万円出しちゃう男の人って…』みたいな(笑)」
西海枝「免状、欲しくなくなってきました…(笑)」
やね「でしょう?(笑)」

※ ちなみに、2015年現在、免状取得のお値段は、当時よりずいぶん安くなっているようです。→ 間違い。2005年は7段が取得できて、その7段が100万円だったようです。(コメント欄にて訂正)

強くなったApery

やね「最近、Apery強くなったんですか?」
平岡「なめらかな値がついたほうがいいかと思って多項式近似使ってた件なんですが」
やね「ああ、あれね。」
平岡「あれやめたら少し強くなりました…。」
やね「誰も多項式近似なんかやってくれって言ってないのに(成功事例もないのに)勝手にやって、勝手に弱くなっていただけじゃないですか?」
平岡「そうなんです…。」
やね「なにその、自分の捨てたバナナの皮で転んで骨を折りました、みたいな話…」

強くなったSelene

やね「最近、Seleneは強くなったんですか?」
西海枝「最近、探索部の大きなバグを取って、それを取ったら強くなったみたいで…。」
平岡「西海枝さんにAperyとの対戦をやってもらったら、短い時間だとSeleneがだいぶ勝ち越すみたいで…」
やね「え。Aperyに勝ち越すんですか!?」
平岡「長い時間だとわかりませんが。あと最新のAperyのバイナリ(実行ファイル)を送って追試してもらおうと思っているところです。」
やね「Seleneってどういう学習メソッド?」
西海枝「いまのはTDLeafで。」
やね「それで学習時間いくらぐらいかかるんですか?」
西海枝「4ヶ月ぐらい…。」
やね「いくらなんでもかかりすぎでしょう…。AWAKEとか3日で収束させてるんですよ?TAT(Turn Around Time≒開発のサイクル)長すぎて、開発が進まないんじゃないですか。」
西海枝「まあ、そうなんですけど(笑)」
やね「ちなみに学習部のソースコードを公開する気はないんですか?」
西海枝「以前のものは、ちょっと自分のブログで公開してたんですけどね…。」
やね「読者の反応は?」
西海枝「何もありませんでした…。」
やね「それは寂しいですね…。今回の学習部を公開する予定は?」
西海枝「みんなが真似して、Seleneチルドレンみたいなのがいっぱい出来ても(ソフトの多様性がなくなって)面白くないですし。」
やね「いや、ちょっと待って。学習に4ヶ月かかるんでしょ?そんな方法、誰も真似しませんて!!(笑)」
西海枝「そうですか(笑)」

つづく

電王戦Finalを終えて その2」への35件のフィードバック

  1. こういう話が聞きたかったんです!
    すっごい楽しい!
    これ読んだ後、また記者会見見直したら、なんかまた違ったふうに見えました。

    • それにしても平岡さん、やっぱり「後先考えない」という「思い切りのいい性格」なんでしょうねえ。

  2. やねさんが人間側のアドバイザーなるのもいいけどやねさんがソフト側の団長になっても凄く面白いような気がしてきました。(役目は不明)

  3. 裏話楽しく読ませてもらってます。

    今回の電王戦が終わってからいろいろ考えていましたが、将棋ファン(そして特に山本一成さん)が望んでいた最強ソフトVS羽生善治名人の”白熱した面白い戦い”はもう実現出来ないのでは無いかと思い始めました。
    今回の結末を見る限り、羽生さんが対ソフト戦に登場したとしても、対人間と同じ指し方で来るとはとても思えないので。

    結局今回は研究していた手をソフトが乱数で指すか否かのくじびき中継になっていたように思うのですが、最強ソフトVS羽生善治名人の実現可能性についてはどれほどとお考えでしょうか。

    • 何かよく分からない文章になりましたが、端的にいうと「アンチコンピューター戦術が話題となり今回は終わりましたが、この状況でも羽生さんは登場すると思いますか?」

    • > 最強ソフトVS羽生善治名人の実現可能性についてはどれほどとお考えでしょうか。

      羽生さんには事前貸出なしでソフトと15番勝負ぐらいして欲しいところでありますが(笑) まあ…当分は実現しないのかなと。

  4. お疲れさんです

    awakeは3日で収束ですか。

    ◆第2回将棋電王トーナメントPR文書

    三駒関係から利きや相対位置の同じものを共通化して,特徴ベクトルに加えて学習することによって、出現頻度の低い特徴を補完し、精度の高い評価関数を実現しています

    ◆第24回世界コンピュータ将棋選手権アピール文書

    学習時の工夫として、二駒関係KPのPの部分を利き、三駒関係KPPのPPの部分を利きと駒の関係に分解して、特徴として加えて学習することによって過学習を抑制しています。

    ◆第25回世界コンピュータ将棋選手権アピール文書

    ・ミニバッチ学習により収束までの時間を削減しています。
    ・学習時の工夫として、利きと相対位置による次元下げをして学習をしています。

    やっぱりミニバッチとかがすごいのかな?

    • 次元下げをすると一つ一つの因子の値自体は小さくなるので収束はそこそこ速いと思いますね。あとAWAKEは3台使ってはりますし。普通の4コアPCなら10日ぐらいなのでは。やねうら王もそれくらいのようですし。

  5. こういう会話の公開って大丈夫なんですか?
    対面の二人の会話だからある程度本音で話してくれる内容ってこともあると思うんですが。
    今後やねさんと話すときは公開されること前提で抑えて話す人が増えてしまうような気もしますが^^;

  6. 去年の4月からずいぶん免状の料金安くなったみたいですよ。
    http://www.shogi.or.jp/menjou/index.html
    今の料金体系なら、飛びつき5段+6段で50万弱ですか。

    西海枝さんも、やねさんの話だけ聞いてたら、ちょっともったいないような気がしましたので。

      • さっき、なんとかちゃんねるをちらっと見たら、「免状値下がったっていうソースがない、嘘ばっかり」みたいなことが書いてあって、おかしいなーと思ってよくよく調べてみたのですが、100万円というのは七段の免状取得時でした。

        2005年は、将棋連盟 81周年記念で+1の段位、すなわち七段まで取得できたので、これが100万円だったのです。それで全部足すと160万かーと思って眺めていたので、それを私は6段までの合計と勘違いしてしまっていたようです。

        2005年のweb archiveにその表記が残っています。
        https://web.archive.org/web/20050206234736/http://www.shogi.or.jp/nintei/index.html

        初段 31,500円
        弐段 42,000円
        参段 52,500円
        四段 73,500円
        五段 105,000円
        六段 262,500円
        七段 1,050,000円

        = 1,617,000円

        本文で166万円と書いたのはこの金額を間違えて記憶してたからです。

  7. 誰にでも100戦100勝するソフト作るのは無理だけど(自己対戦的に矛盾してるし)一番強いソフトに100戦100勝するソフトはやねうらおさんは作れるでわけですよね。
    でも多分そのソフト総当たりのリーグ戦やったらそんな強くない気もしますし、強いってなんでしょうね。
    ちなみにじゃあ他はどうでもいいので羽生さんにだけは100戦100勝するソフト作ってって言われたらどんなアプローチになるのでしょうか。
    下剤とか人質とかでしょうか。

    • > 羽生さんにだけは100戦100勝するソフト作って

      それは普通に強いソフトを作るしかないような…。羽生さんの苦手そうな戦型を選んだほうが少し得だとは思いますが、羽生さんクラスならどの戦型でも指しこなせるでしょうしね。

  8. 西海枝さんってブログやってたんですね
    でももう今はやってないのかな。見つけられない

  9. 初めまして。電王戦、お疲れ様でした。
    さて、私は、ソフト開発者が投了するのは、電王戦の趣旨に反すると思うのですが・・・。
    機械VS人の戦いのはずが、人VS人の戦いに戻ってしまうからです。
    どんなに見苦しい戦いでも、ソフト自身が投げるのを見守るべきだと思うのですが、いかがでしょうか?・・・

    • > 機械VS人の戦いのはずが、人VS人の戦いに戻ってしまうからです。

      なるほど。であれば、人間の「指し手」も機械が自動的に入力してくれないといけませんね。あと、プログラムも人間ではなく機械自らが作らないと本当の意味で「機械VS人」ではないのかも…。

    • 翻訳
      1、今は開発者がプロ棋士の指した手を入力しているが、それは画像認識で機械が自分で行わなければいけない。
      2、今は開発者がソフトを開発しているが、それは機械が自分でソフトを開発しないと、、、、どうにも無茶な事を言う人がいたものだ。

  10. 「巨瀬さんは負けて悔しがっている、子供」みたいな的外れの批判が多くありますが、どう思いますか?
    私個人の意見としては、磯崎さんのように「プロ棋士好みの定跡系を登録してあげたら、逆にハメ手に利用されてしまった。だから憤りを感じている。」ということだと思うんですけど。
    本当に勝ちだけを目指すのであれば、最初の数手を30通りのランダムに指すような事も出来ると思うのですが。

    今回の電王戦は、開発者陣がプロ棋士の対策を舐めていたと思います。
    「ハメ手を使えば人間の5戦全勝も可能」などと言ってるバカもいますが、個人的には「開発者が定跡を本気で編集したらコンピュータの5戦全勝も可能」だと思っています。その点についてどうお考えですか?棋力ではもう人間を越えていると思いますが、ハメ手に対する対策はお考えでしょうか。

    • > 最初の数手を30通りのランダムに指すような事も出来ると思うのですが。

      後手番ですと角換りとかはすぐに同じ局面に合流するような..。あと、変な定跡を選択すると長い持ち時間だとプロの棋力をもってすればそういうのは咎められやすくて、短い持ち時間の勝負とは事情が違ってきますね。

      > 「開発者が定跡を本気で編集したらコンピュータの5戦全勝も可能」

      うまく定跡編集をして、仮に事前貸出なしと同じぐらいの勝率になるように調整できたとして、コンピューター側の1局の勝率は8割ぐらいでしょうから、全勝するには0.8^5 = 0.32768。33%程度しか全勝する可能性はないことになるので、全勝は少しハードルが高いかなという気が。

  11. 追記
    阿久津八段がほとんどのソフト共通のハメ手を指したために、AWAKEと本気で向かい合ってくれなかった憤り、逆説的に白旗を挙げつつも、うわべだけの一勝を取りにいった憤りなどもあるかと思います。

  12. 電王戦お疲れ様でした。
    当初では一番不利と言われていたやねうら王が勝利して、
    逆に有利と言われていたソフトが負けたりして面白かったです。
    ところで究極的な質問なんですが、やねうらおさんは
    プロとソフト、現時点でどちらが強いと思いますか?

  13. 軽快な文章でおもしろかったです。文才もあるのですね。

    > 『六段の免状のために166万円出しちゃう男の人って…』みたいな(笑)」
    女の人からこのようにいわれるビジネスについて、考えてしまいました。
    女の人のビジネスなのか。。。

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