電王戦Finalを終えて その8

前回の続き。前回記事から時間が空いて申し訳ない。今回が最後の記事です。


遅れてきた佐藤大輔

佐藤映像の佐藤大輔さんが登場。川上会長と同じテーブルに着いて、全体に向けて挨拶。

佐藤「皆様、はじめまして。佐藤大輔です。今回の電王戦では皆様には大変お世話になり…(中略)…感謝致します。あと、やねうら王さん!あんなブログでのレギュレーション(※)があるなんて聞いてないよ〜!」

一同爆笑。

※ 私が事前にこのブログの記事「電王戦3局用のPVの撮影終わりました【前編】」のなかでPVが公開される前に佐藤映像からのインタビュー内容を公開して、佐藤映像の作るPVの内容を制限したことを指してます。佐藤大輔さんはこのブログの一連の記事を読み、そしてそれに答える形で電王戦のPVを制作されていたのです。

川上会長からお褒めの言葉が

ドワンゴの保科さんは、ドワンゴで将棋・囲碁ジャンルのプロデューサーをされていて、今回の電王戦でも開発者の窓口を兼任されている。

保科「川上会長が、(Finalの5局目のあとの)記者会見でのやねさんのこと褒めてましたよ!」
やね「ほんとですか!」
保科「あの人、空気読めるんやって…(笑)」
やね「わはは。平岡さんが私が言いたいこと先に言っちゃうから、咄嗟に逆のポジションを取ったんですよ。」

やねうらおの年収は!?

片上理事と。

片上「やねさん、プログラムで年収うん千万ってほんまなん?なんか、関西の若い子(コンピューター将棋開発者)を集めて、奢ってやったらしいやん?」

やね「プログラムの仕事で年収うん千万とか、そんなうまい話があるわけないじゃないですか(笑)」
片上「ウソなんかい〜!!!(笑)」
やね「気持ちのいいツッコミありがとうございます。まあ、『年収うん千万のプログラマ』って言われると、プログラミングの腕が素晴らしくてそれによってその稼ぎがあるかのように聞こえますが、そうとは限りませんよね。株で1億儲けた将棋指しだって『年収1億のプロ棋士』には違いなくて。」
片上「日本語って難しいね(笑) やねさんは、コンサルで儲けてるの?」
やね「稼ぎの大半はそうですね。私はあまりプログラムは書いてないです。」
片上「一社がそれだけ(うん千万)払ってくれるの?」
やね「一社ではないです。いくつもの会社とコンサル契約しています。」
片上「やねさんにコンサルを頼みたい会社がそんなにあるんだね。すごいな~。将棋指しなんて稼げても普通は…ゴニョゴニョ(小声)」

佐藤大輔 VS やねうらお

遠くの席から佐藤大輔さんが、私を呼ぶ声が。

佐藤「おーい、やねうら王さん。ちょっとうちもコンサルしてよー!」
※ もちろんジョーク。「こっちのテーブルに来て話をしようよ」の意味。

やね「はいはい」
佐藤「(やねうら王の)PVはどうでした?」
やね「最高の仕上がりでしたよ。」
佐藤「それは良かった。(満足気)」

(中略)

佐藤「こういう仕事ってキャッチボールみたいなものじゃないですか?」
やね「わかります。インタビュー、そしてその映像作品を通して対話が成立するということですね。」
佐藤「うん。やねうら王さんが最高の球を投げて、そしてボクが最高の球を返した。そうでしょ?」
やね「そうですね。」

(中略)

佐藤「ボクは正直言って、やねうら王さんが炎上しようがそれは知ったことではない。」
やね「私も佐藤映像が爆発しようが、佐藤大輔が後ろから刺されて死のうが知ったことではないですよ?(笑)」
佐藤「わはは。お互い、そういう共通認識があっても、そこでキャッチボールが成立してるんだよね。」
やね「ですね。わからない人にはわからないかも知れませんが。私と佐藤大輔との間にはそういう対話が成立していました。」
佐藤「会ったこともないのにね。」
やね「はい。」

(中略)

佐藤「ボクは今後もやねうら王さんを撮りたい。(映像)素材としては最高だから。プロ棋士の人たちや開発者の人たちはどの人も個性が強く、素材として面白いけど、そのなかでもやねうら王さんと平岡さんは別格だからね。」
やね「平岡さん、ちょっとこっち来て!平岡さんが、めちゃくちゃ褒められてますよ!!」
平岡「な、、なんですか?(笑)」

片上理事×佐藤大輔×やねうらお

佐藤「やねうら王さんは、将来コンピューターが人間を超えたとき、世界はどうなると思いますか?」

遠くにいた片上理事が参加。

片上「面白そうな話してるね。参加させてもらおっと。」

やね「佐藤さんはご自分の仕事を奪われるのが心配というわけですか?」
佐藤「うん。映像自体、コンピューターで自動的に生成できる時代が来るんじゃないかと思っている。やねうら王さん、映像の自動生成って出来ないものなの?」
やね「古くは物語の自動生成とかありますね。」
佐藤「物語の構造っていくつかに分類できるからね。」
やね「ウラジミール・プロップが『昔話の形態学』でやったように昔話は31の構造に機能分類できるというアレですね。だけどいまだ機械が自動生成する物語は商用で通用するレベルには至っていないですよね。映像作品の自動生成は物語の自動生成よりさらに要求が厳しいのでもっと先になるんじゃないですかね。」

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佐藤「コンピューターが人間の仕事―――とりわけ俺の仕事を奪うんじゃないかと思うと、それが怖い。」
やね「2045年に人工知能が人間を超えると言う説があり、私自身も人工知能が人間の知能レベルになるのはそのころだと思いますが、しかし2045年に人間を超えた瞬間は、まだそのコンピューターは何十億円もするわけでしょう?それがダウンサイジングしていまのPC並みの値段になるのはそこからさらに2、30年ぐらいかかるのでは。」
佐藤「え?どういうこと?」
やね「え?いまの話、わかりにくかったですか!?」

片上「2045年の段階でコンピューターが人間と同じだけの知能を持てたとしても、それはいまの『京』みたいなスーパーコンピュータでしか実現できないので、何十億円もかかるということですよ。」
やね「何十億円もかかる機械にパートのおばチャンが出来るような仕事をやらせたらもったいないですよね。だから、2045年の時点では佐藤大輔の仕事は奪われないということです。」
佐藤「なるほど。」
やね「佐藤大輔の仕事が奪われはじめるのはそのコンピューターが家庭用ゲーム機ぐらいの値段で手に入るころだということです。ムーアの法則からすると20年以上かかるでしょうから、そのころには佐藤大輔は生きてない(笑)」
佐藤「勝手に殺すなよ(笑)」

ニコ生で…!?

佐藤「この三人の対談、ニコ生とかで流したら面白そうだよね?」
片上「顔にモザイク入れてもらるなら(笑)」
やね「モザイク有りなら出てもいいんですか(笑)」

店の外で

私の泊まるホテルの手配をしてくれているはずの保科さんが見当たらなくて、電話しても連絡がつかなくて焦りまくっているところに片上理事が。

片上「(色んな人に聞いてわかったんだけど)やねさんって本当に天才なんだね…。」
やね「その天才は、今日泊まるホテルがわからなくなって途方に暮れてますが…。保科さんはどこに行ったんでしょう…。」
片上「目の前にいるじゃん。」
やね「あ!?」

本当に目の前に保科さんがいました。

佐藤大輔からの新たな挑戦状!?

酔いがかなり回った佐藤大輔さんが店の外で立ち去りながら。

佐藤「やねうら王、いつかまた撮らせてもらうからな!覚えておけよ!!」
やね「望む所ですわ。(笑)」

— 完 —

電王戦Finalを終えて その8」への49件のフィードバック

  1. やねうら王さん、連載お疲れ様でした。
    これで、自宅のトイレにお化けは出なくなるでしょう。

    自分は最近、囲碁のプログラムをいじっています。雛形をもらったので、少しでも強くしようと思っています。

    やねさんは、囲碁やマージャンのプログラムはやられないのですか?

    • > やねさんは、囲碁やマージャンのプログラムはやられないのですか?

      私は麻雀のAIは13年ほど前に書きまして、『崖っぷち家計簿』という商用の麻雀ソフトに搭載されています。(ちなみにこのソフト、私が担当したのはAI部分だけです。2週間ぐらいで書きました。)

      囲碁はそのうち書いてみたいと以前から思っていますが、DNNで解決しそうな問題を含んでいるので巨大なRAMが載ってるGPUがいくつも要りそうな予感がして…。

      • 囲碁では、モンテカルロの次としてDNNが有望視(評価が始まっただけ?)されているようですね。

        自分は、まだモンテカルロを使ったプログラムで最先端から8年くらい遅れています。。。
        まずは、9路盤に特化しており、もらったプログラムには75%くらい勝てる様になりました。

        マージャンのプログラムは、昔からいんちきをする物が多いですね。
        今よく遊んでいる物は、闇テンで待ち、2順以内に積もる場合、人間が振り込む場合に(ある確率で)リーチをかけてきます。
        昔のPC8001用の物もやたらとリーチ即で上がられました。

        公正なマージャンサーバーがあれば、エンジンを作ってみたいと思っています。(すでにあるのかな?)

        (株)ドワンゴあたりが主催してくれるといいのですが。(コンピュータだと、半荘5分くらいで終わり、中継には向かない?)

        • 麻雀の棋譜ってあとから見て面白いようなものになるんでしょうか。
          ほとんどランダム要素しかないあの競技で何を見ると面白いのでしょうかね。
          あんまり麻雀にはいい印象がないので疑心的なんですが。

          • 麻雀の棋譜は、後から見ても面白くないと思います。ただ、やはり戦略により強い弱いがありますが、乱数の要素があるので勝つこともあり、負けることもあり、です。
            自分で遊ぶ分には、条件反射的に最善手を選ぶ訓練になり面白いです。
            中継するなら、ソフト2種、人間二人で、視聴者にはすべての人の手が見えていると、それなりに面白いかと思います。

          • いやー、オンライン麻雀の東風荘にせよ、天鳳にせよ、レーティングつくじゃないですか。レーティング高い人は牌譜見てもやはり上手いものですよ。運に左右されず、トータルで勝つからこそ高いレーティングが維持できるわけですし。

            ちなみに私の麻雀のレーティングは10年ぐらい前に東風荘でやってたとき1800〜1900ぐらいでした。将棋で言うとアマ3段ぐらいですかね…。

          • なるほどですね。
            顔に出るのは初心者ですけど、意外性が顔に出ないと面白くないと思います。
            配信という意味でAIvs初心者というのは面白いかもですね。プロは顔に出ないですから。
            それと、牌譜っていうんですね。これを見たらやっぱ見えるものがあるのですね。ちょっと意外です。

          • 情報ありがとうございます。
            覗いてきましたが、AI等も登録されており良いですね。
            囲碁で自分の限界を感じたら、次は挑戦してみたいと思います。

      • 電通大の、コンピュータ囲碁講習会に行ってきました。

        Deep Learning は、外国の例だとGPUを20台(?)くらい使っているそうです。逆にGTX670 1台だと一手7分1局1日とかかかるので、マシン持込の大会では、まだまだ大変そうです。性能も十分はでていなさそう。

        プロはすでに現在のコンピュータ囲碁の弱点を理解しており、9路版ですらソフトはまだまだ勝てないそうです。

        いまから参入しても十分Topを狙えるのではないでしょうか。
        やねさん もぜひ!(悪魔の囁き)

      • 電通大の、コンピュータ囲碁講習会(2回目)に行ってきました。
        講師は YSS/Ayaの山下さんで、コンピュータ将棋の某BigNameの方も参加されていました。
        YouTube で講習会の模様が順次公開されています。
        時代はコンピュータ囲碁ですね。(本当か?)

  2. 個人的に、映像の自動生成は考えたことがあります。
    映画にも文法(比喩的な概念ですが)がありますし、物語論の考え方も割と通用すると聞いたので。

    プログラミングスキルはオセロプログラムを組んだことがある程度ですが、例えば銃が映っている映像に(「銃」という単語でなく)「銃がある」という文を紐づけしておいて、文をマルコフ連鎖か何かで並び替えて映画を生成できないかなあ、と。

  3. DNNは世界を征服する新技術ですから、やねうら王さんもいつかどこかでこの新技術と対峙しないといけませんからやねうら王さんが囲碁に手を出すのを楽しみに待っています。

    第1期電王戦も非常に楽しみですよね。やっぱりponanzaでしょうか?
    —-
    2016年春、“人類代表”と“最強のコンピュータ”が再び激突する。

    「第1期電王戦」と銘打たれたこの大一番は、ニコニコ動画を運営するドワンゴと、日本将棋連盟が主催する新しい棋戦だ。勝負は先手と後手を入れ替えて2局行われる。1回の勝負で人間とコンピュータが考慮する時間はそれぞれ8時間。対局は2日間の長丁場になる。
    —-

    • DNNだけではいくらRAMと学習の速度が上がっても人間の知性にはならないですね。DNN単体では状態持てない(?)ので、人間の知性に近づけるためには短期記憶的なユニットが必要になります。誰かがそろそろ発明しそうな…。

  4. ご多忙の中記事をアップして頂き、本当に有難う御座います。

    今回のPVはどれも心に残り考えさせられる作品だと思いますが、私としてはやねさんと稲葉先生のある意味本音がぶつかり合う第3局のものが一番電王戦らしかったと思います。
    さらに今回、やねさんと佐藤さんの「勝負」を通したお二人のやり取りを伺うと、プロフェッショナルの真髄を感じずにはいられません。

    そういえば、最近天下のgoogle先生ご謹製の人工知能「DeepDream」さんが話題になっていましたっけ。出てきた画像を見ると、それアルゴリズムなどの技術は凄いと思うのですが、佐藤映像さんのようなクリエイティブ系のお仕事を奪うのはまだまだ先のようですね。
    というかあの画像や映像が夢に出てきそうでめちゃくちゃ怖いんですけど…。

    • > あの画像や映像が夢に出てきそうでめちゃくちゃ怖いんですけど…。

      最初に動物と魚ばかり学習させるからあんなグロ映像になるのであって、植物であれば…。でも、蓮とかひまわりだと、蓮コラみたくなって、吐き気を催す最強のグロ映像が出来上がったり?

  5. すいません。またOS入れなおしました。こんどはマザーボード変えました。
    さて。お疲れ様でした。
    個性の強い人は良いエンターテイナーになれると思うのですが、やねさんもいい根性してますね。尊敬しますよ。
    あー、それと佐藤映像はひどいですねって言ってたのネタですからね。ちゃんと冗談って言ってたじゃないですか。
    まぁ、ヘイトで人を呼べるのは最初だけで、そこからどうやって和へ転換するかというのが一つの課題に思います。
    やねさんはヘイト高いのでいいおもちゃですけど、実像とは違いますよね。
    どうやって実像で盛り上げるかというのが結構難しく思います。
    最後に、たかしです。満足しました。

  6. コンピュータ将棋とは全く関係ありませんが、7月16日の23時にNHKで放映される「アルゴリズミ子研究所」はお掃除ロボットのアルゴリズルを考える番組で面白そうかもしれません。録画して是非息子さんに見せましょう。橋本環奈ちゃんも出演するみたいですし。

  7. やねさん、あしかけ3ヶ月にも渡る連載?記事を書いていただき、ありがとうございます。(もっとも、前回記事から今回記事の間が…ゴニョゴニョ…)

    私は今年の電王戦には出ないつもり(プログラムが完成しないので…)ですが、やねうら王は出場するんでしょうか?

      • まぁ完成して無くても予選突破できるのがやねさんクオリティーかなぁと。
        さすがに今回は1プログラムだけが選ばれるのでしょうので、やねうら王は予選でしか見られないのかも知れませんが…そうすると、完成しないままになっちゃうんでしょうね(苦笑)

    • 優勝するためではなく、このブログの続きを書くために、出場お願いします。
      優勝するのは、おまけ でいいと思うのは。私だけ?

      • やねさんの才能もキャラクタもここで消えるにはちと惜しいですよ。
        色々もっと話題を振ってください。お願いします。

    • やねさんが出場しない電王戦なんて、、、

      想像しただけでもくそつまらないです。

  8. WCSCもとっくに終わってしまいましたが、やねさんのKPE、次元下げに関する解説が読みたいです。
    外からアピール文書読んでるだけでは、細部がちょっとわからないので…。お時間有りましたらよろしくお願いします。

    • KPで、Kの利き8近傍をE1〜E8 × Pの利きをe1〜とすると
      新しいKP = KP + KΣe + PΣE + ΣEe
      みたいな感じで、元のKPに含んでそうな項はΣの計算から端折る、みたいな。
      (端折ったほうがいいかどうかはわかりません。AWAKEは端折ってます。私は端折らないほうがいいと考えてます。)

      • 解説ありがとうございます。
        KΣe項のおかげで、駒が良く利いているほど評価値が大きくなり、効きを評価できるということでしょうか。それでも28角のような(駒の利きが悪い)手を指してしまうのが素人目には不思議なところです。

        (随分前に、記事を書くと言われてた)NDF2015の解説も待ってます。

        • > 駒が良く利いているほど評価値が大きくなり

          利きがあるほど評価値が高くなるわけではないと思いますよ。結局、左辺のKPの値が棋譜の指し手がベストになるように調整されるわけなので…。いままで出現回数が少なくてゼロになっていたKPやKPP項がちょっと補整されるかな、ぐらいの意味では。

          • なるほど、言われてみればそうですね。
            思いっきり勘違いしていました。恥ずかしい。

  9. skylakeで、TSX:トランザクショナルメモリ命令がcore iシリーズまで降りてきたらしいです。
    これにより、メモリの書き換え性能の向上が見込まれるらしいですが、コンピュータ将棋には応用できそうですか?

    • Bonanzaなんかでは使おうと思えば使えるのですが、Stockfishではhash table、lockも何もしてないんですよね。いまどきメモリはふんだんにありますから、それのentryへのアクセスが並列化によって衝突する確率は極めて小さいですし、衝突したとしてnone PV nodeでは実害はあまりないので無視できるということなのだと思いますが…。

  10. やねさんがしてるコンサルの仕事ってどんなですか?顧客情報の守秘義務があって書けないでしょうか。

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