UEC杯(電気通信大学 伊藤毅志研究室の主催で行われる大会)の将棋部門として5五将棋AIの大会が定期的に開催されてきた。
// 5五将棋と書くのが面倒なので以下では55将棋と書く。
しかし、今年(2026年)からは55将棋をやめて66将棋になるらしい。必勝法が見つかったのだろうか――そんな疑問から、私はこの小さな世界の終わりを振り返ることにした。
まず、55将棋の千日手のルールについては、55将棋創始者によると、「連続ではなくても手順中に王手を含む千日手であれば、攻め方が手を変えなければならない」というルールがオリジナルであるらしい。
しかし、将棋AIでそのようなルールを変更すると対戦サーバーや将棋AI本体を通常の本将棋のものからかなり書き換えないといけなくなり、わりと面倒なため、UEC杯では通常の本将棋の千日手ルールが採用されている。また、同一局面4回で千日手であり、千日手は後手勝ちとなる。
この「千日手後手勝ち」というルールが強力すぎるため、第13回・第14回のUEC杯における最強のAIであるShioRamenとFairyStockFishでは、後手の勝率が9割程度になり、現行のルールによるAI大会の継続が困難になった。2022年のことである。
そのため、UEC杯55将棋は、「次回大会の開催は未定。ルールを変更して再開を検討中」とのことであった。2023~2025年は55将棋AI大会は開催されなかった。
ここに至る経緯は、以下のレポートにある。
情報処理学会 ゲーム情報学 研究報告
新ルール追加による5五将棋におけるゲームバランスの調整
https://ipsj.ixsq.nii.ac.jp/records/226811
一言で言うと、2020年にやねうら王を55将棋用にカスタマイズして評価関数の学習をさせたら、つよつよ55将棋ができたらしい。
また、55将棋に関しては弱解決には至らなかったものの、14種類の初手のうち、6つの初手が後手の勝ちであることを証明した。また、学習で強くなった評価関数による未証明の8種類の初手それぞれの評価と、AI 同士の自己対局の結果から 55将棋が後手勝ちであることはほぼ正しいと予想したとのこと。
2020年の段階でこの結果なので、これ、現在の技術で巨大定跡を自動生成すれば、必勝手順まで得られそうではある。
しかし、そこまでするまでもなく、後手の勝率9割にもなると、もはや大会は成立しないのである。
そんなわけで55将棋AIの世界は、ひとまず終焉を迎えたようだ。
やねうら王の改造版が、この55将棋AIの世界にとどめを刺す一因になっていた。そのことに私が気づいたのは、すべてが終わってから、かなり時間が経ってからのことだった。技術は前へ前へと進んでいくが、その背後で、名もなき世界が音もなく閉じていくことがある。