たけべさゆり、モーゼとなる

※ この物語は100%実話に基づいて書かれています。

女流棋士たけべさゆりは明日のZoomでの仕事に備え、PCのヘッドセットのテストをしようとしていた。ところがUSB外付けのヘッドセットがPCにどうしても刺さらないのである。おかしいなと思ってケーブルの先端を見たところ、接続口がひしゃげている。

このままでは明日の仕事をキャンセルしなければならない。さゆりは、ヨドバシカメラに代わりのヘッドセットを買いに走る覚悟を決めた。一応、ダメ元でやねさんにLINEを送る。

何が「ゴリラが踏んづけたですか?」だよ。こいつ、きっと私のことをゴリラだと揶揄してるんだな。やねさんめ、許せん。そもそも踏んづけたのは私ではない。家の者だ。それにペンチで直るわけないだろう。こいつまた鼻くそでもほじりながら適当なこと言ってやがるのだろう。

ちなみにペンチは家にはない。やねさんにその旨を伝えると「100均で買ってきましょう」とか宣うではないか。こんなにひしゃげてるのにペンチぐらいで直るわけないだろ。もうヨドバシに直接行くよ。どうせペンチなんかで直らないのに二度手間じゃん。

と思ったものの、ペンチを買ってきて、そして修復を試みて――まあ、100%直ることはないだろうが、それでペンチが無駄になった、やねさんの馬鹿馬鹿、ペンチなんかで直るわけないだろと責め立てれば、代わりのヘッドセットをやねさんが買ってくれるかもしれない。しかも、やねさんを馬鹿に出来て溜飲も下がるし、一石二鳥である。

すごい名案を思いついたものだと、早速、100均に出向いた。ペンチを一つ買うと店員が「レジ袋ご入り用ですか?」とか尋ねてくる。5円払うのは惜しいので、ご入り用じゃないですと答えて、そのまま手に持って持ち帰ることにした。

商店街は人混みで溢れていたが、何故か私の前方がモーゼが海を割ったように人が避けていくのだ。

こりゃどうしたことかと思っていると、どうも、私が右手に持ったペンチを凝視しているようであった。ああ、刃物持ったキチ○イみたいな感じで思われているわけか。レジ袋、やっぱりご入り用だったわ。人目につくので、ペンチを服のお腹の辺りに忍ばせる。ペンチ、冷たい。これも、やねさんのせいだ。やねさんめ。もう、こりゃ代わりのヘッドセット買ってくれなきゃ絶対許さん。

帰宅すると、買ってきたペンチで早速ヘッドセットの差込口を少し元のほうに変形させた。あれ?簡単に曲がったぞ?しかも、PCに普通に刺さった。もしかして直っているのか?PCで確認すると、このヘッドセット、普通に使える状態になっていた。

くそー!やねさんめ!なんでヘッドセットが使えるのか!100均のペンチごときで普通に使えるようになったら、いかんだろ!やねさんの馬鹿馬鹿!100均のペンチで使えるようになるだなんて!やねさん、絶対許さん!!

さゆりは、LINEでやねさんにありったけの怒りをぶつけた。

さゆり「やねさんのせいで、不幸にもヘッドセットが使えるようになってしまいました!どうしてくれるんですか!さゆりはすごく怒っています!いますぐ謝ってください!土下座です!土下座でモーゼに謝ってください!」

やねさん「なんか知らんけど、モーゼ、ごめんな」

たけべさゆり、モーゼとなる」への3件のフィードバック

  1. 今年最高の紅白出場コンビ発見 (#^.^#)!

    その名は :『ペンチャーズ!』 
    構成員は : ゆさぶりモーゼとやねうら王
    演題は  :「ダイヤモンドヘッド愛(AI) の詩」
    内容   : AIと将棋と音楽と

     あー最高におもしろかったです ( ^)o(^ )
    有難う御座いました。

成田 へ返信する コメントをキャンセル

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です