人間は何故過学習をしてしまうのか

私の友人の奥さんはゴキブリが大層嫌いで、先日、ゴキブリが目の前に飛んできたので慌てふためいて後ろに仰け反り(飛び跳ね?)、打ちどころが悪かったのか腰の骨を折ってしまった。

そもそも腰の骨を折ることに比べれば、ゴキブリを手で握り潰すぐらいのほうがまだ害は少ない。何故、このようなことになってしまうのか?

子供にゴキブリを見せてもここまで過剰な反応はしない。ゴキブリに過剰な反応を示すのはどう見ても(過度な)学習の結果である。

また、飲食業で接客を長年していた女性とレストランなどで食事をするとたいていその店の接客態度が気に入らないだとか何だとか言い始める。場合によっては店員に烈火のごとく怒り始める。そんなことをされると一緒に食事をしているこちらまで気分が悪くなるし、ご飯もまずくなる。おまけにその店の接客が良くなろうと別に彼女の収入が上がるわけでもない。そもそも彼女にしてもその店に再度来店するつもりもないのだ。店員の接客態度が改善しようが彼女には何ら現実的な利害は発生しない。彼女がしていることは(彼女自身の心の平静を保つということ以外において)全く無益な行為である。

これもまた、過学習の結果である。

職業的に長い時間、そのことを考えているとそのことについて過学習してしまうわけである。このような過学習は、場合によっては職業病などと揶揄される。

プログラマーならば論理的な矛盾が気になって仕方がないだとか、そういうのを見つけたら指摘せずにはいられないだとか。

何故このような過学習が起きるかを考えてみると、職業的に関わっていると、偏ったサンプルしか与えられないわけである。例えば、プログラマーならば、バグの遠因となるような論理的な矛盾に対しては100%排除していくつもりで臨むべきである。100%なのである。実際の社会の場合においてはここが100%ではないにも関わらずである。

ゆえに、このような偏ったサンプルに対して長時間そればかりに接すると、結果として間違った学習(過学習)をしてしまうのである。

まあ、プログラマーの場合はそこまでそれによって現実生活において実害があるような学習結果ではないので、それほど問題にはならないが、他職であれば、現実生活に支障をきたす場合もある。具体的な事例を出すと間違いなく炎上しそうなので、ここには書けないが。(笑)

また別の例で言うと、悪い男に騙された女性が、それがトラウマになり男性恐怖症になるのも、少ないサンプルに対して強く学習してしまった結果である。

学習は感情的であればあるほど、そして時間をかけて考えれば考えるほど、強く学習される。長い時間、くよくよしているとそれが過学習の原因となるわけだし、強い感情を持っているとそれもまた過学習の原因となる。

このように、自分自身を学習する機械だとみなすと、自分自身に適切な学習をさせるためにはその学習時間と感情との両面を適切にコントロールしなければならないということがわかる。また、同時に学習サンプルが適切でなければならない。特定の分野でしか通用しないサンプルのみを持ちだしてきてはならない。サンプルが偏っていたり、サンプル数が少なすぎてはいけない。良質なサンプルに対して、サンプル数に応じた学習時間を設定することが重要であり、その学習時間を大きく超えると過学習になってしまう。

しかし、たいていの人はこのへんのコントロールが全く出来ていないので無駄に長い時間学習させて、前述のレストランで怒り出す女性のように、過学習ぎみになっていたり、偏ったサンプルからしか学習していないので特定の事象に過敏に反応し、その行為自体が許せなくなっていたりするわけである。

「コンピューター将棋の機械学習にも全く同じことが言えて…」と以下、書きたいことがないではないが、そこはこのブログの読者には言わずもがなであるから、割愛させていただいて、この記事を終わりたい。


人間は何故過学習をしてしまうのか” への12件のコメント

  1. ご友人の奥様が早く回復されることをお祈りしています。

    ゴキブリかどうかを問わず、急に目の前へ飛ぶものがきたら私も飛び上がってしまいますね。
    これは生物学的な「反射(無条件反射)」で、考えることなく(学習の如何にかかわらず)防御反応として体が動いてしまうということかもしれません。

    人間が学習する時に、その対象となる数や反復回数、受け取った情報に対する(感情などの要素による)重みづけが大きく左右するというのもおっしゃる通りですね。

    人間、AIを問わず、「知能」に対して「過学習」を回避できる普遍的な学習方法が確立するとよいですね。

    • > 防御反応として体が動いてしまうということかもしれません。

      子供のうちはそこまで虫が出てきても驚かないですし、防御反応もとらないので、後天的な学習によるものだと思います。

      私、虫が目の前に飛んできても、その虫が何であるかを確認してからしか体動かさないですし…。

  2. セレネの西海枝さんは、歴代名人の棋譜だけを元にソフトを作ったら過学習を起こして激弱になってしまったそうですが
    ハブロイドみたいな羽生さんそっくりに指すソフトを作るのは、やはり不可能なのでしょうか。
    羽生さんも「升田先生のようなソフトと対局したい」と言ってましたけど。

    • > ハブロイドみたいな羽生さんそっくりに指すソフトを作るのは、やはり不可能なのでしょうか。

      少ない棋譜から学習するためには、もっともっと高い水準での学習能力が必要ですね…。

      個人的には、NDFみたく、局面数を何らかの方法で水増ししてやれば、羽生さんの棋譜だけでも学習できると思いますが…。

  3. >「コンピューター将棋の機械学習にも全く同じことが言えて…」と以下、書きたいことが(ある)…

    そちらでしたか。
    読みながら、「お、これは囲碁のDeepLearningへの前振りか」と思いながら読んでいました。残念です。

    書きたい言を我慢するのは、体に良くないですよ。
    では、(以下次号)という事で。。。

  4. 自分も三十数年生きてきてすでに過学習のケがありますね。
    自分は詐欺師タイプなんで、詐欺師が一番怖いです。
    その対策を自分を通して考えとおした結果偏った思考になってしまいました。
    王道から外れ、邪道からも外れ、ただの変なおっさん(ニート)になってしまいました。
    まぁ、いろんなノウハウを得ましたがお金になるところを学習できなかったので滅茶苦茶貧乏です。

    ただそれで一つだけ誇れることは、ミラーの自分を一回倒したことくらいですね。
    自分も王道を歩きたいです。おねーちゃんときゃっきゃウフフしたいです。(血涙)
    て、結局そこかよ。
    とオチをつけておきます。

      • 過学習の結果、大量の保険に入るっていうのは割とトレンドな気がしますけどね。汗
        自分はシンプルにやってるつもりなんですが、どこからか贅肉が発生しますねぇ。
        難しい。

  5. たしか人間をもっともたくさん殺してる動物は蚊だったし、痒みという実害を与えてくるし、ゴキブリが原因で死んだ人は聞いたことがないので、蚊に対しての方が騒ぎそうなもんですけどね。ゴキブリに騒ぐ行動はどこで学習するんでしょうね。

  6. フィリピン人は大人でもゴキブリ大丈夫ですよ。
    いっぱいいるので学習の成果かな。
    日本人のゴキブリ嫌いは、未知への恐怖からきてるんでは。

  7. 日本のゴキブリは大きいそうで、もし、蚊なみの大きさだったらだれも驚かないでしょう。
    他には、ドラマやマンガ等での、”お約束”のリアクションを繰り返し見せられる事による、刷り込みではないかと。
    カブト虫はOKだがゴキブリはNG、という人はこの傾向が有りそうです。
    一部のメーカーがTVで流している、過度な”除菌”礼賛も影響していると思います。(これも刷り込み)

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