人間のように錯覚を起こす将棋AIについて

いまや将棋AIは強くなりすぎた。人間のような将棋AIも望まれている。しかし人間のような将棋AIとは何なのだろうか?「人間のような将棋AI」と言う場合、人間のような弱さ、人間のように間違う、人間のような錯覚を起こす、みたいなのも含まれていると思う。

では、人間のような錯覚とは何なのだろうか?

上の詰み手順はわりと興味深い。81銀(取ると61竜同飛82金)71玉で、このときに7筋の歩が切れているので72歩と打てるから詰む。しかし、将棋初心者はこの72歩が見えない。7筋に歩が打てることが盲点になるというのもあるけど、7筋に歩が打てることに気づいたとしても、将棋初心者は高い確率でこの72歩が打ち歩詰めだと錯覚するのである。(錯覚した人、挙手✋)

何故そのような錯覚が起きるのだろうか?

つまり、この錯覚が起きる人は、81の銀に利きがあると思い込んでいるのである。81の銀に何故利きがあると思い込んでいるかと言うと、直前で「取ると(61竜から)詰み」と認識しているからで、取ると詰む = 取れない = 相手の利きがその升にある という連想をしてしまっているのである。これは間違った連想なのだが、人間は時として無意識的にこういう連想をしてしまうのである。

このように将棋で人間が錯覚を起こすメカニズムはある程度言語によって説明でき、このような錯覚ルールをたくさん集めて将棋AIに意図的にこのような錯覚を生じさせることによって、人間っぽい錯覚を起こす将棋AIが作れそうな気がしている。

人間のように錯覚を起こす将棋AIについて」への14件のフィードバック

  1. 将棋倶楽部24で2700点ほどの者ですが、上記のような局面で72歩を打ち歩詰めと勘違いした経験はゼロと言っていいくらいありません。
    この局面の類似局面で詰みを見落とした時、7筋に歩が効くことをうっかり(=盲点に入る)して詰みを見落としたことは何度もあります。

    • こういう錯覚をしないからこそR2700クラスになれたのではないかと…。
      R1300ぐらいで停滞してる人にはわりとあるあるな錯覚だと思います。(こういうので錯覚するから強い人に勝てないというのはある)

  2. おもしろい。
    人間が「錯覚ルールをたくさん集める」のではなく、(たとえば詰めチャレで)人間たちが解くのにのかかった時間や正答率を元に、「錯覚しそうな特徴をAIに学習させる」のは可能でしょうか。
    コマの位置関係からだけじゃハードル高すぎるかな?

    • そうですなー。錯覚する法則がわかっているならそれ愚直に実装するほうが手っ取り早いというのはありますね…。
      何か人間の脳に近い学習モデルが作れるなら、そっちのほうが良いんでしょうけども。

  3. コンピュータ側に嘘の盤面を教える(人間風に言えばうっかり角や桂の利きを忘れる、相手の持ち駒を誤解する)だけで案外と自然に間違ってくれるんじゃないかと素人(よく角の利きを見落として負ける)的には考えるんですが
    これだと弱すぎますかね
    人間にとっては解像度が低い駒(遠方の歩など)の位置を間違えるだけで人っぽくなる気がする(気がするだけ)

    • その方向性で言うと、人間は例えば駒を移動させた時に現在の盤面とごっちゃになるというのがありますね。頭のなかでちゃんと駒が移動させれてなくて、現在の盤面の利きと錯覚することがあります。あれも、現在の盤面とX%の確率で特定の駒を入れ替えた嘘の盤面をもとに思考させるとそれっぽくなるかもですね。

  4. 錯覚を起こすAIってホントに望まれているんでしょうか?誰得なんでしょう?

    個人的には、最善ではないけど「勝ちやすい手」、つまりそれ以降で次善手以下を選んでもあまり大きく評価値が下がらない手を示してくれる方が需要はあると思います。

    • > 錯覚を起こすAIってホントに望まれているんでしょうか?誰得なんでしょう?

      人間がAIと対局する時に自分と同じぐらいの強さのAIを望む場合がありますが、その時に人間らしいことが要求されることが多々あり、人間らしいには人間らしいミスをすることも含まれますので…。

    • それは0手読みでPolicy Networkのみ使う感じに相当すると思うのですけど、探索なしになるので駒の交換が正しく評価できなくて、数手後に取られてしまうところに角打ったりしてなかなか…。

    • 激指15も、序盤よわよわ、終盤は正確無比みたいなところがあるので人間と比べるとずいぶん違う感じはありますね…。
      アマチュアですと詰将棋、間違えるか見えない(気づかない)のが普通でして…。

  5. 散文調で思いつくまま。

    名人戦第5局そのままですが、先の方で桂馬を取ったり打ったりする詰と、角(馬)を大きく動かす詰が気づきにくい……というか人間の脳内将棋盤でイメージ保持し難くて苦手では。

    中原永世名人は桂の名手と言われて独特でしたが、他のプロは桂を活用できてなかったということのような。

    羽生九段は全盛期直前あたりで香の名手と言われていて、局面によって香は飛車同等の働きをするとあらきッペさんも書かれてますが、そこもなかなか人間の感覚で掴みにくいところかも。

    羽生九段全盛期には、びっくりするようなタイミングで盤の反対側の駒を動かして、視野の広さが際だってましたが、するとそうでない普通の人間は続けて4象限の同じ象限の駒を動かしがちかも。

    最近はコンピュータ研究で待機策が流行ってますが、羽生九段全盛期は、びっくりするところで手待ち手渡ししていて、するとそうでない人間は積極的に局面を良くしようとしすぎて、相手に一手指させて悪くさせるのはやりにくく、積極的に仕掛けがちかも。

    (永瀬軍曹以外)人間は疲れてくるので、100手を超えて穴熊再構築とか守りのコマを打ち合う展開は嫌いで、早く決着がつく攻め合いを選びがちかも。

    毎回毎回同じような将棋を指すと飽きてくるので、せっかく研究してても実戦では思いついた善悪不明の手を指すかも(山崎九段)

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