世界的なポーカープレイヤーのお二人がやねうら王のツイートを巡って…

事の発端は、私が、最近炎上ぎみであった大澤昇平さん(id:Ohsaworks)のツイートはAIによるものだと思っているとツイートしたことです。

※ 元のツイートはすでに削除されています。

このあと、大澤昇平さんが一連のツイートは「AIの過学習」であったとお詫びをされたことから、私が早い段階でそのことを見抜いていた「さすがやねさん!」と言う世界的なポーカープレイヤーである木原直哉さん(id:key_poker)と、「いやいや、やねさんのあのツイートはジョークでしょ」と言う同じく世界的なポーカープレイヤーである池内一樹さん(id:cc_hyahhoo)との間で賭けが成立する事態に。(負けた方が日本赤十字に募金するそうです。なんとも平和的な賭けで微笑ましいですね。)

そんなわけで、この私のツイートが冗談でツイートしているのか、それとも本気でそう思ってツイートしているのかについてここでツイートするまでの思考過程を詳らかにし、ジャッジしようと思います。

 

私が最初に大澤昇平さんのことを知ったのは、「HTTPSなら90%安全」(ここで言う安全とは、フィッシング詐欺のような詐欺サイトではないの意味)という内容のツイートでした。サイトをHTTPS対応にするためにはSSL証明書が必要ですから、詐欺サイトはそのようなコストをかけないことのほうが圧倒的に多いというのは、現状がそうなのであれば、正しいのでしょう。しかし、この発言を流布することで、これを信用する人たちが増えてくると、詐欺サイトを作る輩はその思い込みを利用してHTTPS対応の詐欺サイトを作るようになります。なので、セキュリティの専門家ならずとも大澤昇平さんのこのツイートは看過できないツイートであったと言えるでしょう。

この時点で、私は大澤昇平さんの思考の根底にあるのはベイズ推定なのだなと思いました。(ベイズ推定についてはググってください)

大澤昇平さんが「弊社Daisyでは中国人は採用しません」とツイートした時も、まあ、同様の考え方に基づくなら、そうなるわなと私は思ってました。

会社の採用面接で「弊社はXの人は採用しません」(Xには「中国人」だとか、「被差別部落」などが入ります)などと言うのは現代の社会情勢ではおおよそ許されません。Xが何なら許されて、何は許されないのかは私にはよくわかりませんが、Xの集合の範囲は日に日に拡大していると感じます。Xが「清潔感のない」とか「猫背の男性」とかは、公にしていいのか悪いのか。

Xが「東大・京大以外の大学」の場合もおそらく少なからず反発をする人がいるのが実情でしょう。昔は大手企業には、東大・京大以外は採用しないと公言する企業はたくさんありました。公言せずとも、東大と京大の就職課に募集を出せば、東大生と京大生しか応募してきませんでした。そうやって大手企業は、東大・京大生のみを採用してきた歴史があります。

しかし、求人情報をマイナビなどの求人サイトを通じて出すように時代が変わってからと言うもの、東大生と京大生しか欲しくないのに、それ以外の大学からも応募が来るようになりました。企業側としては「東大生と京大生しか要らないんだけどな…」と思いながら、彼らは一次面接で落とすようにします。どうせ採用しないのであれば、なるべく早めに落としてあげるほうが親切というものです。その結果、平均的な学生にとっては「50社すべて一次面接で落ちる」みたいな地獄の就活市場になります。(なっています)

このような不合理性は、「弊社はXの人は採用しません」と公言することが社会的に許されなくなったことの裏返しでもあります。

 

さて、話は変わって、ベイズ推定を行うようなAIが面接官を担当するとどうなるでしょうか?

AIが統計的なデータに基づいて予測するならば、「中国人は平均的には、日本人の平均よりパフォーマンスが悪いので、同じようなスキルを持つ中国人と日本人であれば、採用面接のコストを考えると中国人を一次面接で落とすほうが得である」のように判断することは十分ありえます。(※ 「中国人は平均的には、日本人の平均よりパフォーマンスが悪い」というのは、それぞれの国が子供の教育に費やせる平均的なコストなどの違いから来るものであって、中国人が日本人より人種的に劣っているという意味ではありません。念の為。)

逆に言えば、統計的なデータを元にして判断するAIは、「偏見に満ちている」どころか、「偏見しか持っていない」とも言えます。そして、それがいかに確度の高い予測であったとしても、そのように判断しているということを公にすることは現在の社会情勢ではおそらく許されないでしょう。

そう言った意味では、「弊社Daisyでは中国人は採用しません」というツイートは、いかにもAIらしい思考形態であり、AIがその自分の思いを開陳しているようにも見えます。

このことから、このツイートの主がAIか、AIを利用した何かであっても不思議ではないと私は考えました。無論、大澤昇平さんレベルのツイートをAIが自動でツイートするほどにはAIの技術は進展していないのは万人の知るところですから、私が「大澤昇平さんのツイートはAIによるものだと思っている」とツイートした場合、このツイートはジョークであると受け取られると考えました。

その予想通り、池内一樹さんを含め、ほとんどの人には、私のツイートをジョークとして解釈されたことだと想像します。似て非なるものに譬えるのはジョークの基本であり、その類似度が高ければ高いほど面白いですから。(AIではないけどAIの挙動に似たものを、「これAIだろ!」と言うのがジョークとして成立するのはそういった原理によるものです。)

このように、私は自分のツイートがジョークとして成立することは自覚しつつも、本心から「このツイートの主がAIか、AIを利用した何かであっても不思議ではない」と考えていたことになります。

そこで、木原直哉さんと池内一樹さん、勝者がどちらであるかをジャッジしなさいと言われば、今回は木原直哉さんのほうが、より私の真意を見抜いていたということで木原直哉さんを勝者としたいと思います。

世界的なポーカープレイヤーのお二人がやねうら王のツイートを巡って…」への16件のフィードバック

  1. Xは何なら許されるのかというのは結局「本人の努力ではどれだけコントロールしにくいか」と「仕事のパフォーマンスにどれだけ影響するか」の2点で決まってくる気がします。

    国籍や出自は本人の努力ではあまりコントロールできない(帰化すれば国籍変わるとか言い出したら色々ありますが…)のに対して学歴は頑張ればそれなりにコントロールできるとか。
    あるいは清潔感とか猫背とかほとんどの仕事ではパフォーマンスに関係ないけど見た目が重視される仕事(例えば俳優とか)なら当然関係してくるとか。
    Xの範囲が拡大してるのは、従来は努力で覆せると思われていたことが科学の進歩で努力ではどうにもならないと判明してきたこと(例:うっかりミスが多いのはADHDという脳の障害だと判明した)と、機械化によって本人の属性が仕事のパフォーマンスに影響しにくくなってきたこと(誰にでもできる仕事が増えた)が原因では。

    そう考えると中国人は採用しないというのは、本人の努力ではどうにもならないような事柄で、なおかつ仕事のパフォーマンスにそこまで影響しなさそうということで炎上に適していると思いました。

  2. 原因はともあれ…直ちに謝罪せず、手遅れになるまで何日も放置したのは寓の極み。

    これはこれで AI = artificial idiot

  3. んん?ちょっとこんがらがりますね。

    「やね先生が半分以上本気でAIによる(又はAIがかなり関与した)tweetだと思っている」ということの方が、周囲はより面白く某発言を笑える訳だから(まだAIが人間に及ばないことを前提にして)……

    だからつまり木原氏の勝ちでいいの…ですか。なるほど。

    • 1. AIかAIが関与したツイートだと私は本気で思っている
      2. AIであると私は本気で思っている

      1. ⊃ 2. (“⊃”は真上位集合)で、2.のほうが強い言明です。なので、1.だと冗談とは受け取ってもらえにくく(似て非なるものではなく、そのものになってしまいかねないので)、私がツイートするのは2.である必要がありました。2.ですと、現在のAIがそこまで進歩していないので、ジョークだと解釈するのが普通であるからです。

      しかし、私の内心は、1.ですから、より1.に近かった木原さんの勝ちということですね。

  4. こんだけAIだとバレない文章が出来るのなら、例のベアトリス多過ぎ問題もベアトリスの管理ソフトを作るではなくAIでベアトリスを減らす方向に出来たりするのかな?
    なろう系異世界ものスタンダードノベル生成AIとか、スタンダードノベルよりおもしろいかつまらないかを判定して、つまらないものに「お前の小説家としての道はnarrowだなw」とか言うAIとかw

  5. やねさんの書かれた会誌読みたいのですが、なかなか更新されませんね。。
    なにかアクション起こされてもいいのでは??

  6. ここ1年のNNUE評価関数あまり進展が無いように思えるのですが、3駒のときの限界と近いものなのですかねぇ

    • まあ、桁違いの計算リソースで教師を作ったところでR2,30程度しか変わりませんしね。どんどん新しい評価関数を実装すれば良いと思いますですよ。

  7. 最近は将棋ソフト開発はできてますか?
    なんかもう来年の大会の話も出始めてきましたね

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です