いまの将棋ソフト、人間からすると強くなりすぎて、ソフトの大会での先手勝率が高すぎることが問題になりつつある。例えば、先日の電竜戦では、先手勝率70.0%、後手勝率25.6%であった。
世界将棋AI 電竜戦が今日から開催される
https://yaneuraou.yaneu.com/2021/11/20/the-world-shogi-ai-denryu-tournament-starts-today/
そこで、先手と後手が公平になるようなルールを考えようというのがこの記事の趣旨である。
二手ずつ指す
コネクト6(6目並べ)は、先手が1手打ったあとは、後手、先手が交互に2手ずつ打っていく。
コネクト6(Wikipedia)
https://ja.m.wikipedia.org/wiki/%E3%82%B3%E3%83%8D%E3%82%AF%E3%83%886
この方式、将棋でもできるか(ただし、先手か後手が2手指すとき、同じ駒に対して2回手番を費やすことはできないものとする)を私が聞いて回ったところ、あらきっぺさん(元奨励会三段)が言うには、
このルール、一時期に関西棋士室で流行っていましたね。
私も何度かやりましたが、意外とバランス取れていた記憶はありますね。
とのことであった。
「こうやれば必勝です」みたいな答えが返ってくるのかと思っていただけに、このルールでわりとバランスがとれているということ自体、驚きの結果である。(みんな、このルールで遊んでみて)
後手が途中で先後を選べるルール
たとえば、後手が2手目で先後を選べるというルールを追加する。
そうすると先手は、初手で必勝の指し手(それが何かは知らないが仮に76歩だとする)は、指さない。なぜなら76歩と指すと、後手が2手目で自分の番になったときに先後を入れ替えてしまうからである。そうすると後手を持っていた方は先手となり、76歩で先手必勝なので、元、後手であったほうが必勝ということになる。
このように、N手目で後手に先後を選ばせることで、先手は必勝になる指し手を選べなくなるという仕組みだ。(そこまでは先後が普通の対局のように交互に指すものとする。)
わりと興味深いルールである。ケーキを二人で切り分ける際に不満が出ないようにするために「一人が切って、もう一人が好きなほうを選ぶ」という方法がある。本ルールは、この方法に似ている。
そもそも、このケーキの切り分ける方法、不満は出にくいが、これは本当に公平なのだろうか。
何をもって公平かという哲学的なことをここで論ずるつもりはない。(体積が同じであるとき公平であるとする。また、ケーキの見た目から、どちらの体積の方が多いか判定できるものとする。)
ケーキを切る側の人は、(切る技術の未熟さゆえに)正確に等分できるとは限らない。自分で切ってはみたものの、片側のケーキの方がどう見ても大きい、みたいなことはありうる。つまり、このケーキの切り分けの問題は、切られたケーキを選べる側の方が圧倒的に有利なのである。(この結論を知らない人はわりと多い)
そこで、おそらく選択権がある方が、圧倒的に有利にできるはずである。実際に考えてみよう。
例えば、後手が16手目で先後を選択できるルールを追加したとする。そうすると、その2手前の14手で、77角成みたいな、大駒のただ捨てをすることが考えられる。これを同Xと取ると、先手は角得になるが、16手目で後手が先後を入れ替えてしまう。かと言ってこれを同Xと取れないようでは一方的に角を成られただけになってしまう。
角を成られるのがいけないからと、先手は66歩みたいに角筋を遮断したところで、そのさらに2手前である12手目で66角と角のただ捨てをされる。これを同Xと取り返した場合、あと2手で角を1枚、後手にお返ししないといけない。これはなかなか厳しい条件で、先手が角をただ捨てしたところで後手は取ってくれそうにない。
ということで、おそらくは、このルール、後手必勝である。
後手が16手目で先後を選択できるというのはさすがに無理があるで、ではこの16手目というのが4手目ならどうかという話になる。(6手目だと、34歩~77角成がある。)
その場合、先手は、必勝だと思っている指し手を指すわけにはいかないので千日手が結論となっている指し手を1,3手目で指す。この場合、先手の有利は吹き飛ぶことにはなるが、千日手なら仕方ない意味はある。
しかし、そのためには先手に千日手が結論の指し手が必要だ。そういう指し手がもし将棋にないとしたら、先手は先手有利な指し手か先手不利な指し手を指さざるを得ないのでいずれにしても先手不利が確定する。さきほどの、ケーキの問題で、(技術的に未熟で)ケーキを等分にできないというケースに相当する。
そんなわけで、「4手目に後手が先後を選択できる」というルールは、後手が有利か、悪くとも千日手にはできるということで、要するに後手が得なルールだということがわかった。これでは公平とは言い難い。
片方のプレイヤーがN-1手指して、もう片方のプレイヤーがN手目で先後を選べる場合
ケーキカットの問題からすると、先後が交互にケーキをカットするのはややおかしいので、片方のプレイヤーが先後の分の指し手を交互にN-1手だけ指して、N手目でもう片方のプレイヤーが先後を選択するという方式も考えられる。局面を作る = ケーキカット は、片方のプレイヤーに任せるという考え方である。
ケーキカットの例からするとこの場合も選択権を持つ方のプレイヤーが有利であるように思えるが、実は、局面を自由に選べるケーキカットをする側の方が、事前にそこ以降の定跡をガンガン掘れるので大会では間違いなく有利である。
なかなか現実は思っているようにはならないものであるな…。
持ち時間で調整する
先手の勝率を調整する他の方法として、先手側の持ち時間を減らすというのがある。将棋ソフトも持ち時間が少ないとその分だけ弱くなるので、これはわりと良い調整方法ではないかと将棋ソフト開発者の間で言われている。そのうち将棋ソフトの大会で実際に取り入れられるかも知れない。
まとめ
だらだら書いてみた。変則ルールを追加することを考えるのは楽しいし、意外とバランスが取れていることもあれば、簡単に必勝法が見つかってしまうことも多々ある。コメント欄でアイデアなど教えて欲しい。
更新お疲れ様です。
よく出る案ですが、持ち時間オークション制度が良いかと思います。
事前に「先手の場合持ち時間を何秒減らしていいか」を申告してもらい、減らす秒数が大きい方を先手とするのが比較的公平な方法だと思います。
へーへーへー!面白いですね!
平手の初期局面が先手有利なのは、ソフトによって大会前に知ることができているわけです。
となれば、別のもっと互角な初期局面を事前に探しておくこともできるのでは、ないでしょうか。
初期局面が変わったりランダム化されたりすれば、定跡の事前研究が無効化されることになり、将棋というゲームへの付き合い方がガラリと変わってしまう欠点はありますが。でも他の解決策も似たような欠点はありそうです。
大会運営が用意した局面からスタートするというような大会はあっていいですよね。(第2回世界将棋AI電竜戦TSECがそれ)
入玉宣言に必要な点数を先手29点、後手26点のように後手よりにすればどうなるでしょうか。
囲碁のコミのように互角になる点数に調整できればいいのですが。
普通に打つと黒有利な連珠はそのあたり開局規定として色々模索されているようです。
https://www.renjusha.net/renju/ruleBook.html#daisuuUchi
初めから後手が歩を1枚手持ちにしてるのはどうでしょう。つまり歩が19枚存在
もしも後手番専用に特化した将棋ソフトを作ったとしたら勝率は少しは上がるのでしょうか?
先手と後手では微妙に最善の戦略の違いがあると思うのですが。。
どっちかにパスを1回つけるとか?
どちらの指し手が強いのかを決める公平性を求めるのであれば、テニス(サーブ側が圧倒的に有利)のように先後を交互にやっていって、6局先取で1セット、3セット先取で勝利とかいかがでしょうか。
一局ごとの先後のハンデを解消するのであれば、指し手、時間、局面、ルールのいずれかでバランスを取ることになるんでしょうね。
後手が先手の一手目を指定できるとかだと、後手に有利すぎるんでしょうか。あるいは先手が考えた初手3つのうちの1手を後手が選ぶとか。
囲碁の半コミみたいなかんじで、後手が94歩や14歩を指した局面を初期配置にする、なんていうのはどうでしょう?
「千日手は後手勝ち」
現状の延長とはいえゲーム性変わっちゃう?
「後手のみ打ち歩詰めあり(連珠類推)」
は効果なさそう。
「後手のみトライルールで勝てる」
さらに緩和して
「後手のみ入玉して即詰みされなければ勝ち」とか?
先手作戦から相入玉を奪う。先手振り飛車復権?
でも、持ち時間以外は将棋じゃなくなっちゃいそう……平等に勝ち負け決めるだけならジャンケンでもくじ引きでもいいわけで……敢えて将棋にする意味を求めないと。
そういえば、7番勝負での先後は、先後先後先後後、と、
第1局に後手引いた人が最終局に先手確定の方が公平なんではと思ったことがありました。
先に3勝して早くリーチかけるほうが有利なので。
先手勝率によると思いますが場合わけ検算はしてません……
興業的には、防衛側有利に第1局目はタイトルホルダー先手で防衛側先手4局も良さそうですが、
名人は挑戦者に胸を貸す立場で、第1局は後手で指してほしい、むしろ挑戦者にちょい有利でいいんでないの感はあるかなあ……
類例で、野球は先攻後攻どっちが有利か問題がありますが、メンタル考慮しなければ後攻有利とされてますね。
後攻の方が投手等に代打出しやすい、9回裏に何点取ればいいかわかってるので攻撃に無駄がない。(野球は○点まで取られていい情報では守備側の行動が大きく変わらない。強打者の敬遠はありますけど)
「打ち歩詰め解禁」については、20年ほど前に、羽生9段の「打ち歩詰め禁止がなければ将棋は先手必勝」という発言もありました。羽生9段は、もし先後両方とも解禁すればという趣旨ですが。
打ち歩詰めの局面、実戦ではほとんど出てこないので(打ち歩詰めは戦力が余っているのが原因なのでそれより手前でうまく攻めれば詰ませられることが多い)、打ち歩詰めを後手だけOKにしても、いまの先手の(高すぎる)勝率にはほとんど影響がでないと思われます。
自己レスすみません。
>先に3勝して早くリーチかけるほうが有利なので。
>先手勝率によると思いますが場合わけ検算はしてません……
エクセルで場合分け検算したら、先後の勝率に差があっても、第6戦までの勝率は同じなので、第7戦振り駒が正解でした。
つまり、必ず7戦までやることにしても、双方が4勝することはないので勝者は変わらず、すると、6戦目まで先後同数指しているのでそこまでの優劣はなく、第7戦は振り駒が正しい…
ただ、先手有利の場合、4勝1敗で決めるパターンは第1局先手番が多く、4勝2敗で決めるパターンは第1局後手番が多くなります。
うーん…そうか……ゲーマぞろいの将棋連盟が見落とすはずないか……
素人なんだけど、将棋って先に玉取られたら負けなんでしょ?
じゃあ、後手は玉取られたら後に一手だけ指せて、それで先手の玉が取れたら引き分けにすれば公平なんじゃないの?
それでゲームバランスが取れているなら、いいアイデアだと思います。
将棋のルールを子供に始めて教えるような情景……と思いましたが(失礼)、よくよく考えると面白い!
むしろルール知らないから出てくる発想!?
■ゲーム性が変わるかどうか:めっちゃ変わる
先手の王手や詰手順に後手のみ王手?で引き分けに持ち込める。先手玉の位置をずらして合駒逆王手に持ち込めば主導権奪取できる。
後手からの詰手順、王手ラッシュの効果は従前と同じ。
■先後公平かどうか:
公平と言えば公平のような……
上記の変化を考えると先手からの長手数の詰めを仕掛けにくくなるので、やや後手有利かも?
あれ?
双方王手が掛かってるっぽいから、王手放置のルールあたりの変更とか、一手で2つの王手が掛かるような手が勝利手になったりとかしちゃいそうなそうでもないような?
後手の不利を解消というよりは将棋の戦型を増やしたいというので考えたルールですが。
・先後とも全てのコマが駒台に乗った状態からスタートする
・最初の20手ずつ,40手目までは駒台のコマを自陣に打つことしか出来ない
・全てのコマを打ち終わったら,41手目からは普通の将棋のルールで開始
王の位置を早々に決めてしまうのは不利なので,39手目,40手目に王が打たれるはず。相手の王の位置を見てから王の位置を決められる後手が,一手少ない不利をおぎなえるかと。
55/56将棋の変則ルールでそういうのがありますな…。> 駒台から並べていく。
本将棋でやると中央あたりに香・飛車を縦に並べる感じになって(たぶんそれが最強)、最強の陣形が判明してしまうと、それを開始局面として対局しているだけなり、その陣形からの変化が狭いなら普通の将棋よりつまらないということにはなりそうです。
先手、後手共に1手目は普通に打つ
2手目で、先手はパターンA、パターンB、パターンCの3つの手を提示する
後手はその中から1つを選び、そのターン(2手目)のみ、先手は選ばれた手を打たなければならない
…とかどうでしょう
チェスの世界選手権は、本戦14試合でも、それで決着がつかない場合の早指しによるタイブレークも基本的に先後1組の偶数試合でスケジュールされますが、タイブレークでRapid(早指し)4試合、Blitz(超早指し)2試合×5(サドンデス制)やっても決着しない場合は、アルマゲドンマッチなる1局制のフォーマットが用意されています。こちら、先手5分後手4分の持ち時間で、ただでさえ先手有利なゲームをさらに先手有利にする一方で、引き分けは後手の勝ちとするルールです。
引き分けが頻発するゲームならではのフォーマットですが、将棋に応用するなら、千日手持将棋を後手の勝ちにして、それらの発生率を考慮して持ち時間も後手を増やす、という感じになりますかね。
とりあえず千日手頻発の角換わりは先手に決定権がありますから、千日手持将棋バンザイの後手番専用評価関数に対抗して、先手としては相入玉にになりにくい振り飛車を目指すというのが選択肢に入ってくるようだと面白くなりそうではあります。
後手に2,3手目を指させる、はどう?
2、5でも良いしそれ以降でも
先手の有利な分を早い段階で後手に多く指させて
イーブンにして、さあ、そこからが勝負、と。
将棋の序盤には、指したい手(指すと加点される指し手)がたくさんあるので、1手でも多く指せた方が有利になってしまうような?
オセロでは伏せ石という将棋でいう振り駒に似たルールがありますが、振り駒と異なるのは伏せ石に勝利した方は「手番を選ぶ権利」もしくは「引き分け勝ちを得る権利」を選択できます。
少なくとも人間同士では白(後手)有利と言われていて、引き分けを黒勝利に置き換えるとちょうど勝率が50%となるようです。
とはいえオセロのソフトも圧倒的に人間を凌駕しており、ソフト同士はほとんど引き分けとなってしまうようなので適応はできないと思いますが、ご参考までに。
ソフトが後手番で本気で引き分けを狙うとたぶん引き分けになってしまうので、引き分けを勝ちだとすると必勝になる可能性が高いです。
先後で連勝するまで、フィッシャールールで何局でもやるのがいいと思います。
2回目以降は追加される秒数が減っていく感じで。